“家族殺害”の背景に浮かぶ介護負担「世間と付き合いがなくなった」妻の入院後に…静岡・病院で3人死亡

静岡県富士宮市の病院で9月27日、73歳の男が入院中の妻と娘を刺し、自殺したとみられる事件で、警察は29日、男の自宅を家宅捜索しました。家族を知る知人は、半年前に妻が入院して以降、男が悩んでいるようにみえたなどと話していて、看病の負担が事件の背景にあった可能性が浮かび上がっています。

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<中西結香記者>
「午前11時すぎです。捜査員が家宅捜索に入ります」

富士宮市の病院で3人が死亡した事件。警察は29日、妻と娘を刺し、自殺したとみられる男の自宅を殺人容疑で家宅捜索しました。約10人の捜査員が自宅や倉庫を調べ、段ボール2箱分の資料を押収しました。

この事件は27日午後、富士宮市の富士脳障害研究所附属病院に入院していた妻(72)と娘(40)が病室で殺害され、男が刺したとみられ、自殺したものです。妻と娘の死因は胸を刺されたことによる失血死で、抵抗する際にできる防御創は見つかっておらず、無抵抗のまま刺された可能性があります。捜査関係者によりますと、男が使ったのは包丁で、刺し傷はいずれも1か所だったということです。

2人が入院していたのは脳卒中や脳腫瘍の医療を中心とした専門病院。娘は20年ほど前から脳卒中で寝たきりの状態で、夫婦で支えていたといいます。

<家族を知る人>
「毎日のように(見舞いに)行ってたと思いますよ。ご夫婦で。でも意識がないと言って。『どう?娘さんは』と聞いたら、『最近まばたきしたり、うなずいたりするようになった』と喜んでました」

しかし、妻も半年ほど前、娘と同じ脳卒中になり、その頃から、男の様子が変わったといいます。

<家族を知る人>
「3月17日くらいから。朝、(妻が)倒れちゃってそれっきり。世間とは一切付き合いもなくなった。あいさつもしなかったですね。目も合わせなくなっちゃったよ。思い悩んでいたでしょうね。かなり。見えましたよ。大丈夫かなって」

警察は、男が2人の看病で精神的な負担を感じていたことが事件の背景にあるとみています。

家宅捜索で押収した資料などをもとに、警察は男を殺人の疑いで書類送検する方針で捜査しています。

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