バードピア開設1年、ヨウムの繁殖に力 富山市ファミリーパーク

ヨウム保全に向けた取り組みを振り返る森さん

技術確立へウガンダの保全施設見学

 富山市ファミリーパーク(同市古沢)の熱帯鳥類館「バードピア」が今月、開設から1年を迎えた。熱帯鳥類の保全や多様性を伝える施設で、希少種を含む11種31羽を展示。この1年はこれらの種類の中でも絶滅危惧種・ヨウムの繁殖技術確立を目指し、行動を解析したり、野生に生息しているウガンダの保全施設を見学するなどした。村井仁志園長は「展示を通して保全の取り組みを知ってもらうことが使命」と話す。

 バードピアは昨年9月17日にオープン。施設の入り口前には青と黄の体毛が鮮やかなルリコンゴウインコが出迎える。屋内には東南アジア、アフリカ、南米の熱帯3エリアの展示スペースに多様な鳥が並ぶ。

 9月中旬、バードピアは家族連れや遠足の児童らでにぎわっていた。友人と一緒に来た富山市の60代女性は「珍しい鳥が見られて楽しい。『推し』の鳥もいて、定期的に見守りに来ている」と笑顔。バードピアを目当てに県外から足を運ぶ来園客もいるという。

手探り

 アフリカエリアで展示しているヨウムは大型のインコで、ファミリーパークがバードピア開設に伴い飼育を始めた。知能が高く、飼育下では人間の言葉を覚えるため、ペットとしての需要が高いという。ただ、生息地では密猟や密輸が続き、絶滅が危惧されている。

 開設時に5羽を国内の動物園などから迎えた。ただ、野生の生態を示すデータは生息地でも十分に残されておらず、同パークの飼育員らでつくる「ヨウム繁殖プロジェクト」責任者の森大輔さん(47)は「生活環境や展示方法が全くの不透明だった」と振り返る。

 野生のヨウムは主に群れで過ごすため、自然に近い様子を見てもらおうと同じ部屋に放したが、同パークに来るまでは単独で飼育されていたためか、最初は個別に過ごしていた。

 森さんらは群れの形成を目指し、集まって食べるよう餌を1カ所で出したり、動画で24時間行動を記録したりして研究を進めた。

 試行錯誤を続ける中、お互いを羽繕いするなど親和的な行動が見られるようになった。徐々にペアをつくるようになり、6、7月には2羽の雌がそれぞれ卵を産んだ。「こんなに早く卵を産む段階まで進むとは思わなかった」と森さん。ただ、いずれも無精卵だったため、今後はふ化する卵を産めるようになるにはどのような環境が必要なのか、研究を進める。

連 携

 村井園長と森さんは8月、生物多様性の保全に関する連携協定を結んでいる中部大との取り組みの一環で、ヨウムを飼育するアフリカ東部ウガンダのウガンダ野生生物保全教育センター(UWEC)を訪れた。施設内を見学し、近くで野生のヨウムも見た。村井園長は「野生の生態はこれまで想像でしかなかったが、実際に見ると、意外と群れで過ごさないヨウムもいるなど新たな発見もあった」と話す。

 UWECには同パークでのこの1年の取り組みを伝え、飼育下のヨウムの生活環境のデータや繁殖に関わる情報などを記録するよう求めた。今後は同パークの記録と交換し合い、両国でヨウムの保全に取り組む。

 同パークはこれまで国の特別天然記念物・ニホンライチョウと、呉羽丘陵に生息するホクリクサンショウウオの保全に力を入れてきた。バードピアの開設によりこの対象にヨウムを加えた。村井園長は「地域、国、海外と連携してこの3種を柱に保全活動に取り組む。展示を通して動物との関わり方について考えるきっかけも提供していきたい」と語った。

遠足の児童らでにぎわうバードピア

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