「ノーベル賞は“年中行事”」
ことしもノーベル賞の発表が近づいてきました。日本人の受賞者は?と期待が高まりますが、東海地方でノーベル物理学賞、化学賞受賞の有力候補と言われているのが、名城大学の飯島澄男(いいじますみお)終身教授(84)です。
(名城大学 飯島澄男終身教授 9月14日)
「30年間こういう(ノーベル賞受賞を待つ)機会を私は持っていますので、『ああそうですか』っていう感じですね。これは年中行事なので」
ノーベル賞の発表待ちはもはや「年中行事」で、泰然自若…高揚している様子はみじんも感じられません。
飯島さんは32年前の1991年、「カーボンナノチューブ」を発見。ノーベル化学賞・物理学賞受賞の有力候補と毎年言われ続けてきました。ことしの発表は10月3日と4日です。
カーボンナノチューブは身近なところに…
カーボンナノチューブは、髪の毛の1万分の1の炭素の筒。軽くて、強く、電気や熱の伝導率が高いのが特徴です。スマートフォンや自動車、テニスラケットやゴルフクラブなど、私たちのくらしの様々なところで活用されています。
発見のきっかけは、炭素を使った実験中に出る黒い「すす」をたまたま電子顕微鏡で確認したことでした。しかしカーボンナノチューブとの出会いは単なる偶然ではなかったと振り返る飯島さん…。
(名城大学 飯島澄男終身教授)
「『犬も歩けば棒に当たる』も、当たるべくして動かないと当たらない。『棚からぼたもち』って下にいないと落ちてこない。いろいろ準備をしてチャンスに巡り会った」
それまで20年以上研究を支えてくれた電子顕微鏡を扱う技術が自分にあったので、発見できたと話します。
大学へは84歳のいまも自転車通勤
(名城大学 飯島澄男終身教授)
「健康のために(自転車通勤を)やっています。(大学付近の名古屋の)八事は結構坂がある。朝は下りでいいが帰りは上りでいい運動になる」
趣味はフルートの演奏。去年の学園祭ではその腕前を披露。
(名城大学 飯島澄男終身教授)
「ボケ防止、面白いことはなんでもやる」
「研究って天才だけができるわけじゃない」
この日の単独インタビューでは新たな研究成果を教えていただきました。
(大石邦彦アンカーマン)
「…本当ですね。なんか金属音のような音が聞こえますよね」
(名城大学 飯島澄男終身教授)
「500ヘルツ」
カーボンナノチューブにLEDの光を当てると音が出ることを、2年前に発見した飯島さん。
(名城大学 飯島澄男終身教授)
「やっぱり化学って無限で、何が起こるか分からないなので我々は仕事しなければならない」
そして、決して謙遜ではなくこんな一言も。
(名城大学 飯島澄男終身教授)
「(私は) 凡人ですよ。じゃないとね、研究って天才だけができるっていうわけじゃない」
(大石邦彦アンカーマン)
「先生のその飽くなき探究心を支えているものって何ですか」
(名城大学 飯島澄男終身教授)
「好奇心。やっぱりわからないもの知りたい。どうなってるのか。ただそれだけですね」
飯島さんの研究スタイルは若い頃から変わらないそうで、とにかく顕微鏡を覗き、手を動かす。これを長年続けてきたからこそカーボンナノチューブと出会えたのではないかと話していました。
2年前には、カーボンナノチューブに光を当てると音がすることを発見しました。なぜ、音がするのか?どんなことに活かせるのか?についてはまだ研究途中なんだそうです。
飯島さん曰く「カーボンナノチューブはまだまだ未知の研究素材。私の論文の引用数も年々増えていて、現時点で5万8000件を超えている。世界の研究者が興味を持ってくれている証だ」と話していました。
論文の数の多さがノーベル賞受賞の判断材料の一つとも言われているだけに、期待が高まります。
10月第1週はノーベル賞ウィーク、関係する化学賞は10月3日、物理学賞は4日の発表で、そのほかの日程は、生理学・医学賞は2日、文学賞は5日、平和賞は6日、経済学賞は9日です。