ハウステンボス 香港の投資会社の傘下入り1年 社員の処遇改善進め、イベントも充実

オランダゆかりの人気キャラクター「ミッフィー」が登場して盛り上がるイベント=4月28日、佐世保市のハウステンボス

 長崎県佐世保市のハウステンボス(HTB)が昨年9月30日、アジア最大級の投資会社「PAG」の傘下に入って1年。開業30周年記念の流れから各種イベントを展開し、入場者数はコロナ禍前の水準に戻り始めた。社員の処遇改善も進め、坂口克彦社長は「HTBが頑張って、九州の周遊観光を盛り上げたい」と命題を示す。
 この1年を振り返ると、昨年12月に人気キャラクター「ミッフィー」の体験型ショップ&カフェ「ナインチェ」がオープン。オランダを模したテーマパークのカラーを前面に打ち出し、目玉のスポットとなった。
 続いて日本初の3階建てメリーゴーラウンド「スカイカルーセル」が誕生。今年3月には「ハウステンボス歌劇大劇場」を開設した。年間を六つに分けたシーズンイベントも充実感を増してきた。
 坂口社長はコロナ禍前と比べ、年間パスポートの会員が増えたことを強調。「コロナの逆境の中、社員が気持ちを一つにやってきたことが実を結んだ。リピーターが増えた」と説明する。
 一方、今年7月から社員の月給を平均6%引き上げる給与改定を実施。1年後にはさらに平均6%の賃上げをする。また、10月から年間公休数を現在の104日から8日増やして112日に。来年1月には4日間の休業日を設ける。坂口社長が提案した働き方改革で「観光業界は人材不足。違う業界に流れないよう、投資をして企業価値を高めていく」と人材確保の重要性を語る。
 HTBの調査によると、関東や関西からの来場者の8割以上が、長崎や博多など九州の周遊観光を楽しんでいるという。坂口社長は九州観光の浮揚のため「九州の人が、九州を旅行して人気を上げることが、さらに評価を上げることになる」とポイントを語る。
 今月、運営を支援するマーケティング会社「刀」の代表取締役CEOの森岡毅氏も出席して記者会見が開かれた。「憧れの異世界。」というブランドイメージや、数年間で数百億円の投資をし、年間入場者数を5年後をめどにコロナ禍前の約2倍の約300万人にするという方向性が示された。
 これまでのイベントは従来の踏襲路線で、具体的な今後の取り組みについては、来春、乗り物のアトラクションを導入することが発表されるにとどまった。森岡氏は「長崎、九州、日本にとって大切な場所。開発の余地がある」と語った。お互いの相乗効果で、どう魅力を高めていくか。坂口社長は「1年間の準備を経て、刀のノウハウがこれから花開く。日本、世界の人の心を元気にしたい」という。九州観光をけん引する成長戦略が注視される。

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