3者が紡ぐ、一つの歴史 郷土史家・故後藤嘉一さんの遺品など、古里の歴史を探る企画展

1927年に山形市で開かれた全国産業博覧会の資料などが並ぶ。小幡圭祐山形大准教授(左)が展示内容について説明した=山形市・山形大付属博物館

 本紙などで記者を務めた山形市の郷土史家・故後藤嘉一さんの遺品などから古里の歴史を探る企画展「『オットセイ』のブロニー君と後藤嘉一と後藤ひろひと」が、同市の山形大付属博物館で開かれている。1927(昭和2)年に同市で開かれた全国産業博覧会の入場券やメダルに加え、フィギュアや冊子など約30点を展示。多彩な品から人と人とのつながりが見え、一つの歴史が紡がれていく面白さを体感できる。

 本展開催のきっかけとなったのは、嘉一さんの孫で劇作家の後藤ひろひとさん=大阪府=が今年1月に同大に寄贈した「嘉一ボックス」。同博覧会の未使用の入場券や絵はがき、写真、豆本などが入っていた。嘉一さんは新聞記者として同博覧会の取材をしていたといい、日本の近現代史を専門とする小幡圭祐同大准教授はブロニー君とも関わりがあったのではないかと考えた。広く郷土の歴史を知ってほしいと、今回の展示を企画した。

 展示は、▽ブロニー君の足跡や同博覧会と同館のつながりに迫る「『オットセイ』のブロニー君」▽祖父と孫、2人の意外な共通点や山形との関わりを探る「後藤嘉一と後藤ひろひと」▽遺品寄贈の経緯などを紹介する「嘉一ボックス」―の三つのテーマで構成している。

 27年の山形市中心部の地図もあり、QRコードを読み込むと画像が浮かび上がり撮影も楽しめる。小幡准教授は「珍しいオットセイの墓があると聞き調査してきた。いただいた貴重な資料からさまざまな関連が分かり興味深い」と話した。

 きょう1日午後1~3時に同大でシンポジウムを企画しており、ひろひとさんと小幡准教授が展示の裏話などを披露する。定員は先着250人。9日には小幡准教授のギャラリートークを予定している。展示は20日まで。

 ブロニー君 1926(大正15)年、国内外で興行をするサーカス団「有田洋行会」に入団。27(昭和2)年9、10月に山形市で開かれた全国産業博覧会でサーカスに出演した。芸達者で愛されたが、同博覧会終盤に小石を14個飲んで死んでしまう。同市薬師町2丁目の柏山寺に墓がある。

© 株式会社山形新聞社