社説:ゼロゼロ融資 丁寧な目配りが欠かせない

 政府が新型コロナウイルス禍への対策として、中小企業向けに導入した融資の返済が本格化する中、倒産や廃業が増えている。

 原材料などコスト高騰も響いてコロナ後の業績回復が思うように進まず、先行きの見通しが立たない事業者が少なくない。

 国、自治体と金融機関は、こうした事業者たちの実情に応じて、丁寧で柔軟な支援が求められよう。

 その焦点が、実質無利子・無担保融資「ゼロゼロ融資」である。コロナ禍で売り上げが落ち込んだ中小企業や個人事業主の資金繰りを助けるため、最大3億円を融資する制度だ。

 2020年3月に始まり、全国の融資実績は政府系と民間の金融機関で計約43兆円に上る。未曽有の感染症危機で窮地に立たされた事業者を、手厚い融資で支えた役割は大きかったといえる。

 国が都道府県を通じて利子分を補給する3年間が過ぎる今春以降、返済を始める企業が多くなっている。

 ところが、長期のコロナ禍によって奪われた経営体力と、変容した事業環境は以前のように戻らず、融資の返済が重荷となっている。

 東京商工リサーチの集計によると、23年上半期(1~6月)の全国の企業倒産は前年同期より3割増え、3年ぶりに4千件台に乗った。ゼロゼロ融資を受けた企業の倒産が1.9倍の322件に急増し、全体を押し上げた。

 京都府で6件判明しているほか、滋賀県でも返済負担の影響がみられるという。数字に表れるのは一部だろう。

 飲食・サービスをはじめ客足や受注の回復が鈍い上、長引く原材料高や人手不足も追い打ちとなっている。今後の返済が見通せないとして諦める「息切れ型」が目立つようだ。

 地域に根差し、産業や雇用の支え手として継続可能な事業者の支援に、官民で手を尽くす必要がある。

 国は、業績回復が遅れている企業の月々の返済負担を抑えるため、期間の長い融資を設けて借り換えを促している。

 当初、売り上げの減少幅など融資条件の厳しさから利用しにくいことが問題となり、都道府県の融資制度などを通じて一定の緩和が行われた。経営状況に即して運用を工夫してほしい。

 ただ、融資である以上、事業者が将来にかけて背負う借金に違いない。返済ができなければ、各府県の信用保証協会が穴埋めし、回収不能分は公的な負担となる。

 ゼロゼロ融資が信用リスクを肩代わりし、事実上の破綻企業を延命させた側面も否めない。

 金融機関は、取引先の経営実態と将来性を共に見据え、事業の再生、強化と着実な融資返済を後押しする必要がある。

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