「市民の意識改革につながる制度」45リットルごみ袋1枚10円→45円検討も 値上げは本当にごみ減量につながるのか

静岡県内最大約80万人の人口を抱える浜松市ではいま、ごみ袋の値上げが検討されています。ごみ袋の値上げとは、ごみの処理費用を市民にさらに負担してもらうことを意味します。「ごみ袋の値上げはごみの減量につながるのか?」。意外な結果が見えてきました。

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<フードマーケットマム浜北店 店員>
「こちらがごみ袋の売り場になります」

浜松市指定のごみ袋は、45リットル1枚あたり、平均10円で販売されています。これを45円に値上げすることが検討されています。上乗せされる35円は、ごみ処理のための費用です。

浜松市で1年間に排出される家庭ごみは、約24万トン。1人1日あたり、820gのごみを出している計算になります。浜松市は可燃ごみと不燃ごみを減らそうと、この2種類のごみ袋について値上げを検討しています。

<浜松市ごみ減量推進課 鈴木浩之課長>
「市民のみなさんに、ごみの減量、資源化についての意識改革につながる制度だと考えている」

浜松市が対策を急ぐ理由は、もうひとつあります。焼却炉から出る灰やリサイクルできないごみを埋め立て処理している最終処分場があと20年ほどで満杯になるというのです。この処分場をできるだけ長く使うためにもごみの減量が喫緊の課題だといいます。

ここで浮かび上がる素朴な疑問。「ごみ袋の値上げは本当にごみの減量につながるのか?」

静岡県内20の市・町がすでに、ごみ袋に処理費用を上乗せしています。

一方、ごみの排出量が少ない市・町ランキングをみるとごみ袋に処理費用を上乗せしている市・町のうちトップ10にランキングしているのはわずか4つ。むしろ、処理費用を上乗せしている市・町のランキングは芳しくありません。ごみ袋を値上げすれば、ごみが減るという単純な話ではなさそうです。

ごみを減らすために長らく取り組んできた自治体があります。掛川市は、1人1日あたりのごみ排出量が4年連続で県内最少です。

<掛川市クリーン推進員 松本則夫さん>
「いつもきれいに洗ってくれてありがとうございます」

ごみの分別と減量の啓発活動をする「クリーン推進員」の松本則夫さんは、週3回、ごみ集積場に立って呼びかけをしています。

<住民女性>
「これもそう?本当?ごめんなさい。これも燃えるごみだね。うん、わかった、わかった」

<松本さん>
「はい、ご苦労さまです」

<住民女性>
「(これはビニールなので)こっち入れちゃいけないんだって。燃えるごみだって。わからなかったから持って来ただよ」

松本さんは呼びかけるだけでなく、少量であれば、分別できていないごみを正しい回収日に出し直してあげているそうです。

2015年にごみ袋に処理費用を上乗せした掛川市ですが、その14年前の2001年からクリーン推進員を開始。2023年度は、掛川市内で679人が活動しています。

<クリーン推進員 松本則夫さん>
「これが中にくっついちゃうと、これが燃えるごみになっちゃうので。燃えるごみが増えちゃうので、逆さにしたら油が切れて、プラの資源ごみになりますので。ほんとに小さい、全体からみれば、ほんの小さい気持ちだけど、なんでもそうだけど一歩から。自分自身がそうしていけば、子どもたちが自分の背中をみて、ごみをだんだん減らそうと、少しでも資源を増やして、燃えるごみを少なくすれば、掛川市のためにもなると思う」

「ごみ袋の値上げはごみの減量につながるのか?」。答えは「値上げしただけでは、ごみ減量には直結しない可能性が高い」という結論でしたが、ごみを減らすには掛川市のような住民を巻き込んだ意識改革が求められるようです。

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