地元で産めない? 妊婦の深刻な悩み「本当に命がけ」医療の現状は【現場から、】

静岡県内では出産の受け入れを中止する病院が増えています。地元で出産したい妊婦にとって厳しい状況です。安心して子どもを産むためには、どうしたらよいのか。現状を取材しました。

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生まれたばかりの新生児。

<母親(25)>
「寝ている顔が本当にたまらなくて、愛おしいですね」

この女性は前の週に男の子を出産しました。

<母親(25)>
「里帰りで(出産)しました。何かあった時に安心できると思って総合病院がいいなと」

地元で安心して出産したい。そんな願いをもつ妊婦たちがいま、厳しい壁に直面しています。2023年に入り、静岡県内では出産の受け入れを中止する病院が相次いでいるのです。

<妊娠5か月の妊婦>
「やっぱり選択肢の幅が狭まるので、友人は上の子を産んだ病院で出産しようとしたら、そこがもう受け入れができないと言われて、予定と違うというか、他のところを探さないといけないので大変だったという話は聞いた」

静岡市に住むこの女性は、2024年2月に2人目の出産を控えています。県内で出産を受け入れる病院が減ることに危機感を訴えます。

<妊娠5か月の妊婦>
「この病院しかないとなると、本当にそこでいいのかとか、そういう不安がやっぱり出てくる。お産は本当に命がけのことだと思うので」

県内では出産ができる「分娩取扱い施設」がこの10年で2割ほど減少しています。

<静岡県産婦人科医会 窪田尚弘会長>
「全体の出生数が減っているので、最低限(分娩を)このくらいやらないと収支が成り立たないという線があるので、そこを割ってしまうとなかなかきつい」

出産の受け入れを中止する背景にあるのが未婚・晩婚化による出生数の減少です。全国の分娩数は2013年には100万件に上りましたが去年は81万件にまで減っています。さらに追い打ちをかけるのが地方の産科医不足です。

<静岡県産婦人科医会 窪田尚弘会長>
「診療所でやっている先生はご高齢が多い、後継者がいるところはいいが、いないところも、年齢的にきつくなっていきている」

こうした状況を打開しようと国が打ち出しているのが「集約化」です。

<静岡済生会総合病院 小野田亮医師>
「こちらが今年リニューアルした周産期母子医療センターです」

地域医療の中核を担う静岡済生会総合病院は、2023年3月に産科と小児科でつくる「周産期母子医療センター」を改修しました。

<静岡済生会総合病院 小野田亮医師>
「こちらが新生児室、こちらがスタッフステーション、扉の向こう側で左が分娩室、右がNICU(新生児特定集中治療室)、GCU(新生児回復室)、このように1フロアにつながっているのがリニューアルの大きなポイント」

近年、高齢での妊娠や不妊治療後の妊娠などハイリスクな出産が増加傾向にあり、母親と赤ちゃんの双方を見守る体制が求められています。

国は地域の分娩を中核病院に集約することで十分な数の産科医を確保し、安全な分娩体制を維持したい考えです。

<静岡済生会総合病院 小野田亮医師>
「産む場所が分からなくなってしまった妊婦さんいるので、そうした方が済生会にいらしていただいても安心して産めるように、我々はそうした受け皿をしっかり準備し、地域のために貢献できたら」

産婦人科や小児科があり、多くの医師や助産師のいる総合病院は出産する女性にとって心強い存在です。

<静岡済生会総合病院 酒井佐和子助産師>
「患者さんが産後、心も体も休める空間が増えた、そこが1番良かったのでは」

地元で安心して出産できる環境を守りたい。現場の医師や助産師は母親に寄り添い続けています。

<静岡済生会総合病院 小野田亮医師>
「おめでとうという幸せな力が病院全体を明るくする。病院だけではなく地域も、日本もすべてが元気づけられる」

<滝澤悠希キャスター>
静岡県内でも待ったなしの問題ですね。

<坪内明美記者>
県内で分娩を扱う施設は年々、減っていますが、数字の裏では地域によって格差があるのが実情です。県内では、静岡市や浜松市などは病院が複数ありますが、それ以外の自治体では1か所の病院しか選択肢がない地域もあります。

<滝澤キャスター>
解決策として国が打ち出す病院の「集約化」は進むのでしょうか。

<坪内記者>
病院の医師たちに取材する中で、集約化によって医師の確保は可能になる一方で地域格差が解消するような集約化ができるのか注視する必要があると訴えていました。

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