依頼された破産申し立て手続き怠り 2,900万円返却せず…65歳男性弁護士を「除名」に 静岡県内初の最も重い処分

静岡県内の弁護士が依頼された破産申し立ての手続きを怠り、依頼者に返すべき約2900万円を返却していなかったとして「除名」処分を受けました。「除名」処分は、弁護士としての活動ができなくなるなどの最も重い処分で、県内の弁護士としてこの処分が下されたのは、初めてのことです。

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<静岡県弁護士会 杉田直樹会長>
「ここに県弁護士会を代表して、深くお詫び申し上げます」

「除名」処分となったのは、男性弁護士(65)です。県弁護士会などによりますと、男性弁護士は2015年7月、静岡市内の企業が経営破綻した際に企業と代表者夫妻の破産手続きの依頼を引き受けました。

しかし、裁判所に提出が必要な破産申立書を出さなかったうえ、企業が所有していた不動産などを売却して得た少なくとも2877万円を保有したまま、依頼者に返金していないということです。

弁護士の懲戒処分は4段階。重いものから順に、除名、退会命令、業務停止、戒告となっていて、今回、男性弁護士に下された処分は最も重い「除名」です。

弁護士は、各都道府県などの弁護士会に所属していなければ活動ができませんが、「除名」処分は弁護士会から退会となり、実質、弁護士の身分を失ったうえ、3年間、弁護士の資格がはく奪されます。「除名」は静岡県弁護士会として初めての処分です。

男性弁護士から預り金を返還されていない依頼者は2022年3月、2,078万円を返却するよう男性弁護士を相手取り、民事訴訟を起こしています。

依頼者から預かった金はどうなったのか。関係者によりますと、男性弁護士から「親族の所有不動産を処分して返済する」と提案があり、預かった金はすぐに返せる状態ではないとのこと。つまり、依頼者の金に手をつけた可能性が強まっています。

10月2日、渦中の男性弁護士の自宅を訪ね、チャイムを鳴らしたものの、男性弁護士は不在なのか、応答はありませんでした。男性弁護士は県弁護士会に対して「大変申し訳ない」と話したということです。

男性弁護士は別の破産申立についても手続きについて虚偽の報告を行ったなどとして、2019年、県弁護士会から「戒告」処分を受けていました。

そもそも今回の問題は、犯罪には当たらないのか。法律に詳しい専門家は・・・。

<常葉大学法学部 細川壯平教授>
「横領罪については返還請求の拒絶も横領になるという判例があるので、ずばり、わたしは一般的に犯罪になると考えられると思います。職務として他人の代理になったりするわけですから、しかも非常に高い職業使命があるわけですから、言い方は悪いが、会社に頼まれて集金してきてきたものを横領するのとはわけが違うと思う」

県弁護士会はSBSの取材に対して、告発については検討していないと回答しています。

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