ウクライナ難民が語る「セーフティゾーン」、その言葉に込められたさまざまな思いとは? 堀潤が現地レポート

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。9月26日(火)放送の「New global」のコーナーでは、ルーマニアに出張取材中のキャスターの堀潤が“ウクライナ難民の現状”を伝えました。

◆今なおウクライナ各地で空襲警報が…

この日、ルーマニアで取材中の堀。なぜルーマニアに向かったのかといえば、ウクライナ難民を受け入れているユニセフ(国際連合児童基金)からSOSがあったから。「(難民を保護している施設の)来年度の予算確保をどうしていくか。各地でさまざまな問題が起き、世界的に資金が足りないなか、日本の多くの人たちに(現状を)発信してほしいというリクエストがあった。あとは現在、映画を制作している最中で、ウクライナの戦争をしっかりと伝えるために向かった」と渡航の理由を語ります。

今回堀が足を運んだのは、ウクライナ難民がルーマニアに入国する国境線。首都ブカレストから飛行機で1時間かけてルーマニア北部の都市「ヤシ」へと向かい、そこからさらに車で移動したその先は、ルーマニアとモルドバの国境。戦争が始まって1年7ヵ月以上ですが、今も難民の皆さんがバスに乗ってここに到着する事態が続いています。

ウクライナから到着したバスの車内には、オデーサをはじめとした今も戦闘が続いている地域から逃れた17人のウクライナ難民の姿がありました。

そのひとり、子どもとともに避難してきたイバーナさんに今の気持ちを聞いてみると「到着して穏やかな気持ちです」と安堵の声が。

空港の近くに住んでいたというイバーナさんによると、ウクライナでは午前3時30分から6時まで空襲警報がないのに爆撃があったり、無人爆撃機のドローンの音が鳴り響いていたり、恐怖でしかなかったといいます。そして、子どもに対しては「子どもたちは状況を理解していませんので、何もそのことを話していません」との言葉が。

さらに、ひとりで避難してきたという65歳の女性に話を聞いてみると、見せてくれたのは、スマートフォンのアプリ。それは現在どこで空襲警報が鳴っているのかがわかるウクライナの地図。今、その瞬間にもミコライウやオデーサで空襲警報が発令されていることが一目でわかります。

そして今回の取材中にも、その女性のスマホに搭載された空襲警報の通知が鳴り響きます。

ウクライナから避難してきた人たちはその後、ルーマニアで生活するための手続きを行います。数時間、ある人は数日以上かけてようやくここに辿り着いた。今この時間も空襲警報が鳴っている地域から、ほっとした様子で皆さんがここに到着する様子が伺えると、堀はレポートで伝えました。

◆圧倒的に支援が足りない…ウクライナ難民の現状

今回、映画用に撮影した素材を公開より前に放送し、さらには時差があるにも関わらずルーマニアからオンラインで「堀潤モーニングFLAG」に出演した理由について、堀は「急務だから」と話します。そして、「今もウクライナの人たちは空襲警報に悩み、(避難してきた方々は)自分たちが過ごしている施設の資金がショートしかけている。行き場を失うかもしれないから」と危機的な状況であることを伝えます。

さらには「先進諸外国は"さまざまな支援を”と言っているが、どこまで本気でこの戦争を止めようとしているのか。日本は本当にこのままでいいのか。岸田政権は復興、人々を支える人道支援に力を入れると言っているが、現場で話を聞いてみると確かにやっているところはやっているが、それ以上に圧倒的に足りないことが伝わってくる」と今回の取材で感じたことを明かします。

堀は今回さまざまな場所を取材し、そのなかには親を失った孤児やさまざまな理由で親と暮らせない子どもたちがいる施設も。現地に行ってみると、子どもたちは笑顔で迎え入れてくれたと言い、「彼ら自身、すごく憤りを感じていると思うが、その憤りや不安や孤独などを僕らには一切見せることなく、前向きな話をしようと心がけてくれていた」と振り返ります。

しかし、実際にはさまざまな不安があり、例えば進路。施設で学んだ後にどこで働くのか、どうやって学業を繋げていくのかなど、そうした仕組みは決して十分ではありません。そうしたことも含め、堀は「リアルタイムでこうした現状が起きていることに対し、僕らは必死になってみんなが連帯しないといけないと強く感じた」と素直な思いを吐露。

スタジオにいるアフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんからは、堀に向け「映像を観ているとホッとしている表情が窺えたが、不安は山積している。その辺り(避難民の方々は)どういった心境なのか?」との質問が。

すると堀は「もちろん不安でいっぱい」と返答。ただ、ウクライナでは目の前で家族を失い、家も壊される、とても悲惨な状況とあって「まずは爆撃がないところに来た」という安堵感があるとし「(避難民に)話を聞いてみると(真っ先に)『セーフティゾーン(安全な場所だ)』という声を聞くが、そこには本当にいろいろな思いが込められていると思う」と慮ります。

関西大学特任教授の深澤真紀さんは、こうした難民の現状を知ることと同時に、もうひとつ学ぶべきことがあるとの指摘が。「ルーマニアは過去、旧ソ連に領土を奪われていたり、ウクライナの国境あたりのブコビナ地方はひとつの文化圏だったりして、複雑な感情を抱いている人も多いという報道もある。私たちは東欧の戦後秩序なども知らないので、そうしたことを改めて学ぶことも重要」と補足していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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