30本試して見つけた「33インチのL字」 木下裕太の“救世主”は開幕2日前に届いた

シーズン88位の平均パットが大会6位。打ち方にも変化があった(撮影/大澤進二)

木下裕太が2018年「マイナビABCチャンピオンシップ」以来となる5年ぶりのツアー2勝目を飾った。賞金ランキング87位とシード確保へ追い込まれる中で迎えた試合。今季の苦戦がウソのようにパッティングが冴えわたった。

「一番(の勝因)はパター。ミドルパットが良かった」。15番(パー5)で決めた6mは、先にバーディを確実にしていた同組の金谷拓実と星野陸也に食らいつくクラッチパットだった。

シーズン通算88位(1.7965)の平均パットが今大会6位(1.6327)。最後の1枠となるランク70位でシードに滑り込んだ昨年もトップ10に入った当地のグリーンとの好相性も口にするが、最大の決め手は開幕2日前に作ってもらったというオデッセイ「ホワイト・ホット ブラックシリーズ #9」だ。

昨年の秋口から悩みを深めていたグリーン上。「もともと、考えないようにしていたんです。考えたら手が止まったり、イップス気味になるのは分かっていたので。でも、考えないといけない年齢(37歳)になってきたのかなと思っていろいろ考えた結果、おかしくなった」。打ち方に加え、使う“モノ”も試行錯誤。「家はパターだらけ。30本くらいはありますね」と苦笑する。

開幕2日前に作ってもらったL字パター(撮影/亀山泰宏)

いつだったか思い出せないくらい昔に少しだけ使った記憶があるL字マレットは、この1年で次々と試した30本の中にはなかった。きっかけは日大時代の後輩でもある島野隆史キャディの助言だった。「自分の選択肢に(L字)はなかった。『僕の動きに合っていそう』というアドバイスを、もう丸のみして」

助言に従い、形とともにこだわったのは33インチの長さ。これまでより短くしたことで両腕を“張って”打つ感覚になり、ストロークの緩みが消えてスムーズに動くようになった。最初にリクエストした32インチから1インチ長くする微調整もハマった。

「いままでは悩んで、ただ練習するだけで余計おかしくなっていた。今週は課題が見つかったというか、腕を伸ばしてやってみようと、少しワクワクしながら来ていたんです」。苦しくても、決して諦めなかった日々が報われた。

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