引っかかれたような痛み スマホの光も苦痛に「はやり目」引き起こす 「アデノウイルス」強い感染力にドアノブでは1か月以上も生き残るしつこさも

両目が充血し、痛みでスマホの文字すら見えなくなることも…。アデノウイルスの感染によって起こる「流行性角結膜炎」通称、はやり目です。非常に強い感染力を持つため、医師の許可が出るまで出勤できません。

症状が回復したとしても後遺症が残るケースも…。一言で表すと、タフでしつこいウイルスです。「RCCの記者も経験、簡単には完治しない『はやり目』」を深掘りします。

いま、全国で流行している「はやり目」ですが、かかった場合、強制的に出勤を控えなければなりません。「はやり目」にかかって2週間療養した記者の体験から、その症状を深掘りします。

末川徹 記者
「きょうこそは目がよくなっているのでは?と期待したが、よくなっていません。目の全体が充血しています。小さい砂が入っているような感覚で、ゴロゴロしています」

特効薬はありません。

末川徹 記者
「夜、寝ている間に涙がずっと出ていて、朝起きると、目ヤニがまぶたにくっついて、目を開けるのに時間がかかりります」

一日4回、処方された2種類の目薬を使って回復を待つ日々です。

末川徹 記者
「いつ治るのか、不安と闘いながらの生活です」

症状に気がついたのは、9月7日の朝、起きた直後でした。左目が充血しはじめ、大量の目ヤニがこびりついていたのです。10日は、右目も充血…、仕事を早めに切り上げ、眼科で検査した結果、「アデノウイルス性結膜炎」と診断されました。

新型コロナウイルスなどと同じ、5類感染症に分類されるため、医師の許可が出るまで出勤できません。最初は熱・痛みはありませんでしたが、15日の夜中、右目にツメで引っかかれたような痛みが襲い、目が開かなくなりました。

視界もみるみるぼやけ、外を歩くと、足元がおぼつかない…、テレビやスマホの光も受けつけませんでした。

末川徹 記者
「だいぶ目が白くなってきたので、病院に行ってきます」

発症から2週間、痛みも落ち着いたため、眼科で検査してもらいましたが…

医師
「目ヤニがかなり出ている。右目が赤い。さきほどの別の人が(回復まで)2週間かかった。長い人は1か月くらいかかる」

2日後、右目の赤みがじゃっかん残っていたものの、再々検査に行きました。

医師
「週明けからは(出勤して)いいです。しっかり目薬・消毒を…」

結局、出勤の許可が出たのは、発症から19日後のことでした。

職場復帰から5日後、広島市南区の眼科を訪ねました。国立感染症研究所などと連携し、ウイルス性結膜炎の診療ガイドラインを作成する 戸田良太郎 院長に、目の状態を診てもらうと…

戸田眼科・皮ふ科 戸田良太郎 院長
「あった。この白い線状のにごりです。これが特徴的で、多発する。重症なタイプに罹患したことが分かります」

一見、正常に見えますが、よくみると、角膜に白いにごりがあります。ウイルスによる炎症が強いほど現れる症状で、見づらさ・光が反射して見えるなど、視力に影響を及ぼす可能性があるといいます。

戸田眼科・皮ふ科 戸田良太郎 院長
「角膜がSOSを出している。『炎症が強いから助けてくれ』と…。ステロイド(点眼薬)を使って、できるだけにごりをとっていく」

アデノウイルスは、人との接触や身のまわりにあるものから感染します。

戸田眼科・皮ふ科 戸田良太郎 院長
「例えばドアの手すりについていると、30日くらい生きている。プールの中では、1か月以上生きていることもある。ウイルスが死ににくい」

はやり目の原因となりやすいアデノウイルスの型は、新型コロナのように変異しながら増え続けていると話します。

戸田眼科・皮ふ科 戸田良太郎 院長
「アデノウイルスも型を変えて生き延びる。型を変えてモデルチェンジしようと、ずっと生存できるように」

いわゆる、プール熱と呼ばれる咽頭結膜熱と、非常に感染力が強い流行性角結膜炎は、実は、同じウイルスの違う型なのです。

戸田眼科・皮ふ科 戸田良太郎 院長
「アルコールでは死滅しない。石けんをつけて手を洗ってアルコール消毒する。これが完璧。そうすることで新たな感染を防げる」

「はやり目」にかかった、記者の解説です

末川徹 記者
「2週間長かったと思いました。症状がひどいときは目の前が全く見えない。人とすれ違っても、男性か女性なのか、顔すら分かりませんでした。体はすごく元気だが、目は開かない。退屈を超えてしんどいと思いました」

「プールに週2~3日のペースで通っていて、コンタクトをつけて仕事しているが、ウイルスがついた布・ドアノブを触った手で目に入れてしまいました。一概に原因はこれだと言えませんが、事前に症状を知っておけば、防げた病気なのではと反省しています」

◆全国の流行状況 2022年の3倍だが、新型コロナの感染拡大前と比べると…

末川徹 記者
「全国の流行状況の推移です。2023年は過去5年間と比べてどうだったのでしょうか。2023年春先から右肩上がりで増えています。2021年・2022年と比べると、9月に入って3倍程度に増えています」

「一方で2018年・2019年はわりと高い水準でした。ここ数年は感染対策をしっかりしていたから、あらゆる感染症の報告数が少なかったのです。新型コロナが『5類』に移行してから、増え始めている印象です。2022年と比べると、発生数はものすごく多いが、感染拡大前の水準に戻ってきているという認識です」

◆はやり目 異変に気づく3つのポイント

末川徹 記者
「わたしも全部当てはまりました。▽片目から充血します。3日後、ウイルス増殖がピークを迎えて、反対側の目にうつりました。涙でうつるそうです。▽目はかゆくありません。感染症なので、白い目ヤニが出てきます。▽アデノウイルスは、リンパ節をつたって、あごの下・耳の前にうつります。症状が出たら、はれます。わたしも左側がはれましたが、おかしいなと思ったら眼科を受診してください」

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