「洗濯代行で地域の孤立防ぐ」 生きがいにつながるワークシェア、高齢者や子育て世代集う

地域住民が気軽に訪れ、洗濯物を折り畳む作業ができる仕事場を開設した齊藤徹さん(久御山町栄・アクワベース)

 洗いたてのシャツやズボン、下着を机の上に広げ、素早く折り畳んでいく-。手を動かすのは近所に住む高齢者、子育て中の母親、20代の若者など、さまざまだ。齊藤徹さん(45)は、2月に京都府久御山町栄の空き店舗にオープンした仕事場「アクワベース」で、運営するクリーニング・清掃会社「アグティ」(同町森)の代表取締役を務める。

 アクワベースは近隣住民に気軽に集ってもらう場として設けた。同社の洗濯代行サービスで預かった衣類を折り畳む作業を用意し、賃金も支払う。「『仕事』をきっかけに、顔の見える関係やコミュニティーをつくり、地域内で孤立を防ぐことができたら」と狙いを話す。   

 久御山町佐古出身。高校卒業後、同社に入り、35歳の時に創業者のおじから会社を引き継いだ。衣類を個別に洗える特殊な洗濯ネットで顧客の信頼を得るとともに、各業界の人手不足などを背景に洗濯や清掃の事業を拡大していった。  

 経営者としていつも念頭にあるのは「働く人が幸せになるには、その人が住む地域や社会が良い状態じゃないといけない」。こうした考えを基に、地域貢献に力を入れている。

 洗濯代行サービスで個人から依頼された洗濯物は形やサイズがばらばらなため、折り畳む作業の機械化が難しいという。その仕事を社員だけでなく、地域の多様な人にも分け合い、仲間づくりや生きがいなどにつなげてもらう独自の「ワークシェアリング」を進めている。

 これまで近隣市町の障害者支援施設の利用者らを中心に展開。今年に入り、京都認知症総合センター(京都府宇治市宇治)で認知症の人の社会参加を目的にした「洗濯工房」を始めたほか、試みの一形態として開設したのがアクワベースだ。

 同社は主に病院の入院患者や福祉施設の入所者の洗濯代行を請け負う。作業する人には「自分たちが地域の医療や福祉を支えている。そんな役割を感じてもらいたい」。朗らかな笑顔で語る。宇治市木幡。

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