社説:政治とカネ 「ミス」「知らぬ」で済まない

 改造したばかりの岸田文雄政権の閣僚らに「政治とカネ」の問題が噴出している。

 政治資金収支報告書への寄付金などの不記載や、事務所賃料を通じた親族への資金「還流」の疑惑が相次いで判明。首相自身も不記載など多数の修正を迫られる事態となっている。

 前内閣では政務官に起用された秋本真利衆院議員(自民党を離党)が先週、洋上風力発電事業を巡る受託収賄罪で起訴された。

 こうした政・業の癒着や、河井克行元法相による大規模な選挙買収などの汚職・不正事件が繰り返されながら、何一つ働かない政治の自浄作用に、国民の不信は募るばかりだ。

 「ざる法」とされる政治資金規正法の抜け穴をふさぎ、流れの透明化と情報開示の厳格化などの改正に踏み込むことが欠かせない。

 首相が代表を務める自民広島県の支部は2021年、他の党支部から受けた寄付金を収支報告書に記載していなかった。他の記載間違いも含めて計10カ所以上を訂正するとした。

 高市早苗経済安全保障担当相や、滋賀選出の小鑓隆史国土交通政務官が代表の2支部も党交付金や寄付金の不記載が判明した。

 不記載は規正法に抵触する恐れがあり、罰則は5年以下の禁錮または100万円以下の罰金が科される。それぞれ「事務的ミス」などと通り一遍の釈明をするだけだが、裏金工作が疑われる行為である。訂正すればいいでは済まされない。

 さらに、公選法が禁じている国の公共事業請負業者からの寄付受領もはびこっている。

 高市氏ら3閣僚に加え、自民党の新役員体制で萩生田光一政調会長と小渕優子選対委員長がそれぞれ代表を務める党支部が、21年衆院選の直前に寄付を受けていた。

 いずれも「受注を知らなかった」と返金対応するが、それで国民は納得できるだろうか。

 小渕氏は、14年に政治団体の不明朗な政治資金支出で経済産業相を辞任し、十分な説明責任を果たしていないとの指摘が多い。こうした政治家の重用は、「政治とカネ」に対する政権与党の鈍感さを象徴しているのではないか。

 首相は就任時、国民の政治不信を「民主主義の危機」とまで訴えた。ところが相次いだ閣僚の資金疑惑にも「本人が説明すべき」と傍観する。かばい切れなくなると更迭を繰り返す。不信を助長する無責任と言わざるを得ない。

 そもそも規正法の趣旨は、政治団体の活動を国民の不断の監視と批判の下に置くこととされる。ガラス張りにする実効性ある見直しに加え、政治をゆがめる癒着の根本にある企業・団体献金の全廃に照準を当てるべきだ。

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