【なぜ?】大井川鉄道の復旧が遅れる理由…一部再開も全線復旧見通せず

大井川鉄道は1日、不通となっていた一部の区間で運転を再開しましたが、台風の傷あとは深く、全線復旧のめどは立っていません。復旧が遅れている理由とは。

2022年9月に発生した台風15号の影響で、沿線で大規模な土砂崩れなどが発生し、一時全ての区間で運休するなど、甚大な被害を受けた大井川鉄道。1日、大井川本線の家山駅から川根温泉笹間渡駅までの、約3キロの区間で運転を再開しました。まだ薄暗い午前6時の川根温泉笹間渡駅には、始発列車を待つ観光客や地元住民の姿が…

(東京から来た鉄道ファン)

「一部とはいえ再開すると聞いたら、矢も楯もたまらなくなって、第一列車に乗りに来ようと思いました」

金谷駅から千頭駅まで、約40キロをつなぐ大井川鉄道の本線。2022年12月に金谷ー家山間で運転を再開。そして、1日、家山ー川根温泉笹間渡間で運転を再開しましたが、約20キロにわたる半分の区間は、未だ運休しています。運休の原因となっているのが…

(大井川鉄道 広報 加冷 英鵬さん)

「あちらが大井川本線の被災か所の一つです、当社の敷地外から流れ込んだ土砂で(線路が)埋まってしまっている」

不通区間には、約20か所で線路に土砂や倒木が流れ込むなどの被害が。大井川鉄道だけで復旧費用を捻出することは困難なため、被災後から手つかずの状態が続いているのです。全線復旧を目指し、県などに支援を求めていますが、具体的な支援の見通しは立っていません。大井川鉄道の鈴木社長は、現状について「全線復旧は厳しい道のり」だと話します。

(大井川鉄道 鈴木 肇 社長)

「なかなか関係者も多いし、それぞれの考え方もある、簡単ではない」「コロナ以降、経営状況も戻っていない、金谷駅から笹間渡駅までの間の運行で企業の体力を戻す」

改めて大井川鉄道の状況を整理します。

2022年9月の台風により、一時全線運休に追い込まれましたが、2022年12月に起点の金谷駅から家山駅間、そして1日、家山駅から川根温泉笹間渡駅間が再開しましたが、金谷駅から千頭駅までの40キロにわたる本線のうち、半分にあたる約20キロの区間で未だ運休を余儀なくされています。

なぜ、復旧は進んでいないのでしょうか。

その理由は「コロナ禍による大井川鉄道の経営悪化」が背景にあります。大井川鉄道は、SLやトーマス号など、観光客からの収入が旅客収入の9割を占める特殊な鉄道会社です。SLを中心とした“定期券以外”での収入は、2017年度に7億円を超えていましたが、2020年度と2021年度は3億円を割り込むなど、コロナ禍以降、鉄道事業は赤字が続く中で2022年、被災しました。大井川鉄道の職員に話を聞くと「まさに追い打ちをかけるような出来事だった」と話していました。

これまでに運転を再開している区間については、なんとか自社で捻出した費用で、復旧工事を行えましたが、残りの不通区間には、20か所ほどの被災場所があり、大井川鉄道が算出した復旧費用は約19億円と言われています。自力での復旧は非常に困難なため、県や国などの行政の助けが必要な状況ですが、具体的な支援の目途は立っていないため、全線復旧は先が見えないのが現状です。大井川鉄道から支援の要望を受けた県は、復旧に向けた課題や支援について、話し合う検討会を設置していて、今年度内に一定の方針をまとめる予定です。単独での全線復旧が厳しい大井川鉄道にとっては、まずはそこがターニングポイント になるのではないかと思います。

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