【MLBプレーオフプレビュー】とにかく初戦が大事!DバックスVSブリュワーズ

写真:サイヤング賞候補にも名が上がったザック・ギャレンは二戦目に登板予定

明日からMLBはプレーオフが開幕する。162試合のリーグ戦と違い、最短で3試合、最長でも7試合しかないプレーオフでは下剋上が起こることもしばしばだ。今年はどんなドラマが待っているのだろうか。この記事ではダイヤモンドバックス(ワイルドカード3位)とブリュワーズ(中地区優勝)のワイルドカードシリーズを展望する。

まずシリーズの形式から確認していこう。92勝70敗で中地区を制したブリュワーズに、84勝78敗でワイルドカード3位に滑り込んだDバックスが挑む構図だ。3試合すべてがブリュワーズの本拠地であるアメリカンファミリーフィールドで行われ、どちらかが2勝すれば勝ち抜けでディビジョンシリーズにコマを進める。

形式がわかったところで両者の戦力分析に移ろう。まず、シリーズの勝敗を見ると明らかにブリュワーズ有利にも見える。さらに得失点差を見るとブリュワーズが+81点、Dバックスが-15点。得点を競うスポーツにおいて得失点差は実際の勝率と強い相関があり、そこから大きく乖離しているチームは運の要素が大きく影響しているとされる。この点を考慮しても、ブリュワーズの戦力的優位は揺るがないように見える。

だが、注意しなければならないのは得失点差や勝敗は選手の実力をそのまま反映しているわけではないということだ。選手個々の貢献を見ると意外に両者間の力量差は大きくないように見える。もう少し詳細な指標を見てみよう。

こういう場合MLBでチームの力量を測ったり比較したりするために使用される指標が総合指標「WAR」だ。WARは複数の組織によって算出されているが、今回はデータ分析会社「Fangraphs」が算出しているものを使用する。

まず野手だ。WARで見るとブリュワーズが19.0、Dバックスが19.8。なんとDバックスのほうが上回る。ちなみに詳しく内訳を見ると、打撃ではDバックス、守備ではブリュワーズに分があるようだ。

投手の方ではどうだろうか。こちらはブリュワーズが15.9、Dバックスは13.0と、ブリュワーズに分がある。内訳で見ると先発投手では11.2、10.8と僅差だが救援投手は4.7と2.2。救援投手陣の貢献度にはかなりの差があるように見える。

ただ、注意すべきはこれが短期決戦であるということだ。試合数が少ない短期決戦では投手起用で大きな差が出てくる。というのも、リーグ戦では投手の故障や疲労蓄積を防ぐため能力が高くない投手を起用せざるを得ない場合も多いためだ。能力が高い投手の枚数が少なくとも、優秀な投手を集中的に起用することでポストシーズンを勝ち抜けてしまうことは大いにある。

そしてその可能性を秘めるのがまさにDバックスだ。エースのザック・ギャレンは今季17勝を挙げWAR5.2はリーグ3位。また、2番手のメリル・ケリーもWAR3.2と、ブリュワーズのエースであるコービン・バーンズ(3.4)に匹敵する貢献を残している。ただでさえ野手の貢献はわずかにDバックスが上回っている。ギャレンとケリーの活躍次第で下剋上が起こる可能性は十分にある。バーンズとの二枚看板を形成するブランドン・ウッドラフが故障で登板回避が決定していることを考慮すれば、その可能性はさらに高まるだろう。

対するブリュワーズの勝ち筋としてはとにかくギャレンとケリーを早く降板させること。そしてとにかく先手必勝だ。

Dバックスはシーズン終了直前までプレーオフを争っていたため、ギャレンとケリーを最終戦直前に起用していた。そのため初戦に登板するブランドン・ファートは将来のエース候補だが、WARで見ると0.3。力量的には大きく落ちる。ブリュワーズとしては初戦を取って王手をかけた状況で二戦目に挑むのが理想の展開だ。逆に言えば、もし初戦を落としてしまえば王手をかけられた状態でダブルエースを相手にすることになる。

一般的に3ゲームシリーズで初戦を取ることが重要なのは明白だが、このシリーズにおいてはさらに大きな意味を持つかもしれない。明日の試合がどのような展開になるか、注目して見てほしい。

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