神戸を感じ未来を創る芸術拠点「アーク」とは 森山未來さんら企画、滞在者が自由に活動

アークの運営メンバー。左から遠藤豊さん、森山未來さん、松下麻理さん、大泉愛子さん、小泉亜由美さん、小泉寛明さん(アーク提供)

 Artist in Residence KOBE(アーティスト・イン・レジデンス・コウベ)、略称AiRK(アーク)の今を伝える月1回の新連載「アークからの風」が今月始まる。第1回はプロローグとして、「神戸」を感じながら芸術作品を創作してもらうことを目的とした滞在施設、アークの活動を紹介する。(片岡達美)

 2022年4月、神戸・北野町の3階建てマンション2、3階に開設された。外国人向けの仕様で、トイレ付きの広いバスルーム、高い天井、昭和30年代に作られた建具、広いキッチンやメイド用の部屋もある。北側には六甲山、南側の窓からは神戸の街と海を見渡せる。

 アーティスト・イン・レジデンス(以降AIR)はアーティストが一定期間、滞在し、それまでと異なる環境の中で作品制作や調査・研究活動する取り組み。各国で実施され、その運営母体はさまざまだ。

 アークを運営するのは神戸市出身の俳優・ダンサー、森山未來さんら計6人。海外のAIRでの創作経験がある森山さんが、神戸にもつくれないかと構想し、賛同するメンバーが集まった。

 なぜ北野なのか。北野と聞いて多くの人が思い浮かべるのは異人館のある観光地。だが「通りを1本入れば、多くの人が暮らす住宅地。さらに日本の寺社仏閣はもちろんイスラム教のモスク、ユダヤ教のシナゴーグ、インドのジャイナ教の寺院、中国の関帝廟、キリスト教の各種教会と、さまざまな宗教施設が密集する、希有な地域」と森山さん。ここで暮らす人の国籍もさまざまで、その多様性にも注目した。

 これまで美術家、舞踊家、劇作家、映画監督など、国内外43組のアーティストが利用。景色を見て街の空気を吸い、近隣の人々と交流を深めながら、創作してきた。

 8月末にはアークがコラボし、森山さんがプロデューサーとなって、「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond(ビヨンド)」のオープニングイベントとしてアルゼンチン出身のダンサー・振付家、ダニエル・プロイエットさんのパフォーマンスを森の音ミュージアムなどで開催した。

 アークは、自らが主催者となり、神戸市内でイベントやワークショップを行うほか、市内に点在する文化施設・団体と提携し、国内外からのアーティストの受け入れを促進させる取り組みを行っている。

 開設時、森山さんは「神戸には風が吹いている」と語った。開港以来、さまざまな文化を受け入れ、発展してきた神戸の街に、アークからまた新たな風が吹く。

     ◇ 【アークの運営メンバー】 神戸R不動産の小泉寛明さん▽一般社団法人KOBEFARMERSMARKET理事の小泉亜由美さん▽デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)の大泉愛子さん▽アートディレクター、プロデューサー、テクニカルディレクターの遠藤豊さん▽神戸フィルムオフィスの松下麻理さん▽俳優、ダンサーの森山未來さん。

 この順番で、それぞれの下の名前の頭文字を取り、運営する一般社団法人の名称を「HAAYMM(ハイム)」と名付けた。

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