「川の上流域から直接海に流す」大雨のたびに浸水する街を守れ 整備進む“切り札”河川トンネル【現場から、】

静岡県沼津市から富士市にかけて、大雨で浸水被害がたびたび起きている沼川。2023年6月の台風2号では、沼川近くで多くの家が浸水する被害がありました。川があふれないように水を駿河湾に流す3本目の放水路の完成を住民は心待ちにしています。

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<金原一隆記者>
「沼津市内の旧東海道を西に進んでいくと、急に右にカーブする場所があります。この踏切を渡った左側が建設の工事現場になっています。大雨が降った時に雨水を海に流す放水路の建設現場です」

JR東海道線の線路の下を通り、海に向かって掘り進められている「沼川新放水路(仮)」。大雨で水があふれることが多い沼津市西部の浸水被害対策の切り札です。

<静岡県沼津土木事務所 露木靖課長>
「上流域で降った雨を下流へそのまま流すのではなく、上流域から直接海に流すものです」

沼川流域の沼津市から富士市にかけて平野部は、2023年6月、台風2号の大雨でも広い範囲が水に浸かりました。

「沼川」は愛鷹山のふもとの15の川が集まる河川です。海岸線沿いを西に流れて、田子の浦港でようやく海に到達します。沼川が流れる平野部の土地よりも海岸線の砂丘地帯のほうが土地が高いため、大雨の水が平野部にたまりやすいのです。

そこで静岡県は、沼川の上流の高橋川から駿河湾まで、2.3kmの放水路を15年かけて建設中です。いま、最も難しい工事が地下で行われています。

<静岡県沼津土木事務所 沼川新放水路整備課 露木靖課長>
Q.すごいトンネルですね?
「こちらが河川トンネルになる。海岸地域が高い地盤なので、河川トンネルで水を流す。川の水が流れてきて、海のほうがこれだけ地面が高い。この分、トンネルを伸ばして、雨水を海に流すためにこのトンネルが必要」

縦4.5m、横10m、長さは約500mのトンネル河川。これを2本並べて、毎秒150トンの雨水を海に流す計画です。

たびたび、洪水が起きた沼川には、1943年(昭和18)に「昭和放水路」、1964年(昭和38)に「第2放水路」が造られています。3つ目となる新放水路は、2017年(平成29)から建設が始まりました。

国道1号沿いの沼川から海岸まで開通するのが5年後の2028年度。全体が完成するのが2032年度という計画です。

これまでに何度も浸水被害に遭ってきた沼津市原地区の住民は、新放水路の完成を心待ちにしています。

<沼津市原新田自治会 元会長 山本弘一さん>
「100%期待しています。みなさんも。放水路ができるまで我慢するしかないねという話。前回の雨で、あと5年頑張ればいいなと思った矢先に、2023年の大雨になってしまって、6月にあったなら、今年もう1回くらい(浸水被害が)あるじゃないかと心配の人が多い」

地域の期待を背負う沼川の新放水路。この夏、建設現場では親子を招いた見学会が開かれました。開通したら見ることができない巨大な工事現場をすみずみまで案内。順調に進む工事をアピールしました。

<静岡県沼津土木事務所 露木靖課長>
「沼川の新放水路は抜本的な改修なので、これが整備できれば、下流域の河川の水位を下げる効果が出ると思います。(新放水路)整備を1日でも早く完成させるため、われわれ日々頑張っております」

<水野涼子キャスター>
沼津市と富士市の市境付近は大雨が降るとたびたび水に浸かってますね

<金原一隆記者>
過去50年を振り返ると、1974年7月の洪水では床上浸水が約700戸、1976年8月の洪水では約900戸が床上まで水に浸かりました。その後の治水対策によって被害家屋の数は大幅に減っていますが、依然として浸水被害は発生しています。

ですから、地元住民にとって新放水路は悲願の工事。地下トンネルは、JRの線路の下や地元の生活道路の下を通す非常に難しい工事でいまが山場。計画通りに完成するために、慎重に慎重を重ねて工事が進められています。

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