組織的な安全対策「不十分」、再発防止22項目提言 三本木農業高(青森県)牛舎事故、調査委が最終報告

風張教育長(左)へ最終報告書を手渡す大泉委員長
最終報告後、記者会見する大泉委員長(中央)ら事故調査委員会の委員たち

 2021年12月、三本木農業高校(青森県十和田市、現三本木農業恵拓)の肉牛舎で実習中の男子生徒が頭に大けがを負い、意識不明の重体となった事故で、県教育委員会が設置した第三者の事故調査委員会は4日、最終報告書を風張知子県教育長に提出した。牛の飼養管理マニュアルが存在しないなど学校による組織的な安全対策が不十分だったことが、事故発生の最大の要因と指摘。緊急時対応も含めたマニュアルの作成など22項目の再発防止策を提言した。学校だけでなく、県教委も当事者として取り組むよう求めた。

 一方、男子生徒の負傷の原因については「フォーク(農具)が当たったことによる可能性がある」としながら、具体的事実の断定には至らなかった。事故を巡っては県警が、当時牛舎にいた同校の実習助手男性が、興奮状態の牛を制御するためフォーク状の農具を振り上げて牛をたたくなどした際、近くにいた男子生徒の頭に農具をぶつけたと結論付け、7月に業務上過失傷害の疑いで青森地検八戸支部に書類送検した。

 最終報告で事故調査委は書類送検の内容も踏まえ▽実習助手は生徒を牛房外へ避難させる対応を取るべきだった▽人が近くにいる状況で農具を強く振り下ろすような行為は極めて危険で不適切だった-との検証結果を示した。事故後の救急対応は的確だったとした。

 その上で、緊急時の対応を含めたマニュアルが作成されておらず、安全対策が各実習担当者の知見や経験に委ねられていた状況などから、組織的な安全対策が不十分であったことを問題視。再発防止策は「牛の飼養管理実習上の安全対策」「危機管理体制の構築」といった分野ごとに取りまとめ、実習体制や責任の所在を明文化することなどを提言した。

 県庁で最終報告書を提出後、記者会見した大泉常長委員長(青森中央学院大学教授)は「現場にいた実習助手の対応は不適切だが、この現場を生み出したのは学校の組織的な危機管理の失敗であり、事前の県教育委員会の対応の不足。危機対策の問題のしわ寄せが現場の教員に降りかかることのないよう、再発防止策をまとめた」と述べた。

 県教委によると、男子生徒は現在も意識のない状態が続いている。最終報告書は県教委のホームページで公開している。

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