「イベントかツーリズムか」

20数年ぶりに福岡に帰ってきた。元々元気のある街だったが最近の活況ぶりは凄まじくて、いたるところが人・ビル・車で溢れかえっている。余計なことだが、直近まで住んでいた日本一人口が少ない山陰とは正反対だ。

花火大会もイベントのひとつ

先回のコラムでは、この夏地方の花火大会がその運営費を捻出するために有料席化を次々に始めたことと、続けて地元で起こった賛否の意見に関して私なりの考えを述べたが、福岡の知人とそのことを話題にしていて面白い話を聞いた。福岡では夏の風物詩として知られていた「大濠花火大会」が2018年を最後にあっさり中止になった。コロナ禍に突入する前に決まったわけだ。

その理由は、会場に観覧者が殺到して市民の安全を脅かしかねないと市が判断したとのこと。誰もが知っている歴史のある大会だ、「有料化して警備強化するような検討はしなかったのか」との私の質問に対して知人は「福岡では毎日何処かでイベントやっているからなぁ」との答え。

そうか、イベントの一つとして割り切ってしまえばあっさり止めることが出来るのか。

イベントの効能とは

昔、電通本社の部長に「イベント」について話を聞いたことがある。彼の結論は「イベントの効能は、①モノを売る代金を収受する感化する名前を売ること

①はいわゆる物販、デパートの特設階での物産展のようなこと。②はプロ野球やアイドルのコンサート、オリンピックなどのビッグイベントだ。③は上野駅で日常的にやっている観光PRがそう。④は例えば選挙活動のようなもの。との説明だったと思う。

地方自治体が観光振興策を広告代理店に依頼する件は決して少なくない。大型の観光キャンペーン、地方博覧会、首都圏での広告、有名人を使った戦略PRなど。

確かにイベントは人を集める、認知度を上げ、更には外貨を獲得する手段としては、相応の効果が期待できるようだ。

インバウンドが戻ってきた浅草## 観光振興の目的とは

ここで問題になるのが観光振興の目的だろう。地域は「何のために観光振興に取り組むのか」だ。観光に関わる誰もが既に気付いているように「持続可能な観光(サスティナブルツーリズム)」には地域住民の判断が大きい。

分りやすい「イベント」を選ぶか、手間が掛かりそうな「ツーリズム」を選ぶか、誰も経験したことのない巨大市場<インバウンド>が押し寄せてきている。

考えている時間はあまりないように思う。

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 福井善朗(ふくい・よしろう) 山陰インバウンド機構 前 代表理事

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