アストンマーティンLMHプログラム復活の背景をローレンス・ストロールが説明。2024年春に初走行へ

 アストンマーティンは10月4日、ル・マン・ハイパーカー(LMH)・プロジェクトを復活させ、アメリカのチーム、ハート・オブ・レーシングが2025年のWEC世界耐久選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に、少なくとも1台づつを走らせると発表した

 アストンマーティン・ヴァルキリーのレーシング・プログラムを復活させることで、高性能ハイパーカーが「設計された目的」を確実に果たすことができると、英国メーカーのエグゼクティブ・チェアマンを務めるローレンス・ストロールは述べている。

■AMPT設立もひとつのカギに

 アストンマーティンが2020/21シーズンのWECにヴァルキリーをベースとした非ハイブリッドLMHマシンを投入するという当初の計画は、2020年2月に保留されていた。

 マルチマチックが開発したマシンがサーキット走行専用の『AMR Pro』へと進化し、次期コンペティションモデルのベースとなるにもかかわらず、このプロジェクトは休眠状態にあった。

 2020年初頭にアストンマーティン・ラゴンダのエグゼクティブ・チェアマンに就任したストロールは、ヴァルキリーLMHプロジェクト復活の大きな原動力として、アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ(AMPT)部門の設立を強調した。

 AMPTは、イギリス・シルバーストーン・サーキットの近くにあるF1事業本部内に新しく開設されたテクノロジー・キャンパスを拠点としている。

 プロトタイプレースへのカムバックについて尋ねられたストロールは、「いくつかの理由がある」と答えた。

「ひとつ目は、この素晴らしいハイパーカーを手に入れることができたからで、それを設計し、製作したすべての人々が情熱を持って走らせることができたということの証であり、それがこの車が意図したことだ」

「ふたつ目は、私が責任者を務めていたアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズという会社の存在だ。F1チームのパフォーマンスとテクノロジーをロードカーに導入するために、このビルに設立したものだ」

「このクルマから、そして来年の初めに披露する予定のGT3やGT4マシンから、我々は本当にテクノロジーを抽出したいと思っている。そのすべてを、我々の(量産)スポーツカーに注ぎ込みたいのだ」

「私が就任したとき、私はアストンマーティンのパフォーマンス部分により多くの注意を払った。したがって、F1チームにも焦点があてられた」

「アストンマーティンのDNAは常にレースであり、その血の中に流れている。私はその伝統をより大声で、より強く、より速く伝えたいと思った」

アストンマーティンが10月4日に発表した、ヴァルキリー・ハイパーカーのイメージ画像

■当初は1台でのテストを予定

 アストンマーティンの耐久モータースポーツ責任者であるアダム・カーターによると、LMH仕様のヴァルキリーのロールアウトは、現在のところ2024年の第2四半期を予定しているという。

「テストは春頃に開始される予定だ」と彼は語った。

「その後、ホモロゲーション・プロセスに向けて、数カ月にわたるサーキット・テストを行う予定だ」

 テストは、2025年のヴァルキリーのデュアル・シリーズ・プログラムに備えヨーロッパとアメリカにまたがって実施する前に、当初は1台のマシンに集中して行う予定だという。

「まずは1台のマシンに集中し、問題を増やさないようにする」とカーターは付け加えた。

「そのため、最初は春に開発チームの作業を行い、その後拡張を開始する予定だ」

「さらに進んで仕様がより固まったら、実際に(アメリカ側とヨーロッパ側の)分割を開始する予定だ。 アメリカでのレースには違いがあるからだ」

「コースのタイプは、レイアウトだけでなく、コンディションや路面の面でも異なるからね。 だが、皆と同様に、セブリングで耐久テストをするのは良いことだ」

アストンマーティンが10月4日に発表した、ヴァルキリー・ハイパーカーのイメージ画像
アストンマーティンは10月4日、アメリカのハート・オブ・レーシングチームと提携し『ヴァルキリー』で2025年のWECとIMSAに参戦する計画を発表した。

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