「アントニオ猪木家の墓」全国からファン 蔦温泉(青森・十和田市) 命日に米平和活動家も

蔦温泉旅館近くの「アントニオ猪木家の墓」を訪れ、猪木さんの面影に思いをはせるロジャーズさん=1日(ロジャーズさん提供)
猪木さん(右)と交流するアダム・ロジャーズさん=2017年(ロジャーズさん提供)

 元プロレスラーで参院議員も務めたアントニオ猪木さんの意向で、青森県十和田市の蔦(つた)温泉旅館近くに昨年建てられた「アントニオ猪木家の墓」に、県内外から多くのファンが墓参に訪れている。一周忌の1日には、米作家で、国際平和活動に取り組むアダム・ロジャーズさん(59)の姿もあった。ロジャーズさんは、猪木さんとともに、対話重視の国際交流を進めた記憶をたどりながら「猪木さんの遺志を引き継ぎ、平和実現のために努力したい」と思いを語った。

 元国連職員のロジャーズさんは約30年前、米国滞在中の猪木さんと知人を通して知り合い、意気投合。キューバのフィデル・カストロ元国家評議会議長を訪ねたり、北朝鮮を訪問したりして各国との関係改善に向けた取り組みを行ってきた。現在はウクライナ支援を行っている。

 昨年10月1日、心不全のため79歳で亡くなった猪木さんの一周忌に合わせて1日、仕事を調整し滞在先のオーストラリア・シドニーから空路で青森入りした。

 同日は、全国から150人以上のファンが墓参に訪れており、ロジャーズさんも「道」と刻まれた墓の前で、手を合わせた。墓の維持管理を行う城ケ倉観光(青森市)の計らいで急きょ、蔦温泉旅館に1泊することになり、宿泊していた猪木ファンと深夜まで交流。昭和と平成のプロレス界をけん引した「燃える闘魂」の思い出話に花を咲かせた。

 ロジャーズさんは、猪木さんが生前、北朝鮮への対応について「対話をしないと待ち受けているのは断絶だけだ」と語っていたのを覚えているという。「猪木さんの平和を願う気持ちは世界を駆け巡り、今も人々の心に残っている。私もコミュニケーションの大切さを胸に国際平和に力を入れていきたい」とコメントした。

 墓の建立に協力した城ケ倉観光の丹野智宙(ともひろ)代表取締役は「忙しい中、シドニーから駆けつけて、翌朝にすぐアメリカに帰るその行動力に驚いた。あらためて猪木さんの偉大さと人望の厚さを感じている」と話した。

 「猪木家の墓」は2022年5月建立。19年に亡くなった猪木さんの妻・田鶴子さんの遺骨が納められている。猪木さんは生前、田鶴子さんとともに頻繁に蔦温泉を訪れており、近くに墓を設けることを望んでいた。墓のデザインは猪木さんが手がけた。

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