「野菜こんなに甘かったのか」 受講生も驚く料理教室、野草研究家の知恵

自宅の庭で育つマコモ(左)など野草を使った料理教室を開いている西本さん=南丹市園部町宍人

 京都府南丹市の西本方さん(69)は、自然の摂理に沿った食べ物が健康をつくるとの思いから、野草料理を研究している。ススキを煎じた茶、タンポポの根のきんぴらなど素材のうま味を引き出す食べ方を学ぶ教室が人気で「食と精神は一体。昔ながらの質素な食に、生き抜くための力が詰まっている」と普及に努める。

 広島県尾道市の農村に生まれ、子ども時代の楽しみはイタドリやツクシを摘んで食べることで「自然に育てられた」。絵を描くのが好きで20歳ごろ、京都市の染色工房に就職した。だが化学染料による制作に違和感があり、3年ほどで独立。泥や草木による染めに長年打ち込んだ。

 転機は、手作り市に出展していた15年ほど前。別のブースで京都出身の思想家桜沢如一(1893~1966年)が提唱した健康法「食養」を知った。伝統食を土台にした菜食をし、食材に陰陽があるとしてバランスを整える養生法だという。

 衣服の自然染めにこだわってきたが「体の中にも自然を取り入れて当然と気づいた」。食養に詳しい野草料理研究家に習い、肉食を避け、野草や無農薬野菜を生かす料理を習得した。「他の人にも知ってほしい」として教室も開いてきた。

 5年ほど前、精神障害者のグループホームから食養に基づく調理の仕事を頼まれ、園部町に移った。自宅の庭や周囲にはススキやメヒシバ、ヨモギなど多彩な植物が生えており「煎じて茶にするために探すのが楽しい」と満喫している。

 秋には、マコモの茎が肥大化したマコモタケのフライや煮物を仕上げる講座を南丹市内などで開いている。アスパラガスのような食感で「癖がなくおいしい」。食の季節感が忘れられつつある中、自然の法則に沿った旬の食材からエネルギーが得られると訴え、受講生からは「野菜はこんなに甘かったのか」と好評だという。

 米こうじ作りから始める昔ながらのみそ仕込みやイネの自然栽培も行い、都市部から関心のある人が集まっている。「自然の一員としての生き方を伝えたい」と意気込む。

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