自転車で走行中、ひき逃げされながら、ヘルメットを着用していたことで一命をとりとめた男性。後遺症に苦しみながらも、再起を目指す姿を取材しました。
「車がまっすぐ突っ込んできた」自転車に乗っていたところをはねられ…
愛媛県西条市丹原町に住む佐伯秀行さん(50)。今年5月、ひき逃げ事件の被害に遭いました。自宅近くを自転車で走っていたところ、向かって来た軽乗用車にはねられ、佐伯さんはその衝撃で、自転車ごと道路わきの田んぼに投げ出されたのです。
佐伯秀行さん
「車がまっすぐ自転車に向かって突っ込んできたんです。自転車はだいたい15キロぐらいでゆっくり走っていてぶつかりました。なんで当たったんだろうって感じでした。普通にすれ違えると思っていました。はねた車を見たら、車から降りることもなく、後ろも見ずにずっと走っていきました」
軽乗用車の運転手は、はねた佐伯さんを助けることなく逃走。衝突音で事件に気付いた近所の人の通報で、救急搬送されました。
佐伯秀行さん
「手に激痛が走って、手を見たら親指がぶらさがった状態になってたんで、これ指ちぎれたかなっていう感じで…」
鎖骨や腕の骨を折るなどの重傷でした。当時は寝返りをするだけでも激痛が走ったという佐伯さんですが、医師からあることを言われたといいます。
命を守ったヘルメット
佐伯秀行さん
「『ヘルメットをかぶっていたから、このぐらいで済んだんだろう』という話はされました」
佐伯さんの命を守ったヘルメット。
佐伯秀行さん
「ヘルメットにへこみがあるのと、たぶん田んぼに落ちた時にできたキズ。あと、車に直接ぶつかってプラスチックの部分が割れています。ヘルメットをかぶっていたおかげで、頭が守られていると思います」
今年4月から努力義務化された自転車用ヘルメットの着用。佐伯さんのように事故で命が救われたケースは、着用しなかった場合と比べ2倍以上も高いといいます。
愛媛県では、2013年に条例が施行されたこともあって早い段階から取り組みが進められていて、全国の警察が今年7月に実施した調査では、着用率59.9%と全国平均の13.5%を大きく上回り1位でした。
握力はまだ10キロ… リハビリ続けながら完全復帰を目指す
そして事件から3日後、警察は、佐伯さんをはねた軽乗用車の男性運転手を逮捕。その後の裁判で、運転しながら携帯電話の画面を見ていたという、事件の原因も明らかとなり、男性運転手には懲役1年4か月執行猶予4年の有罪判決が言い渡されました。
佐伯秀行さん
「握力がまだ10キロそこそこなので、ちょっと力がいる仕事とかはできないですね。肩とかも後ろにあがらないですし、これがどうやって回復していくのかな…」
3か月余りの入院の末、8月中旬に退院した佐伯さんですが、後遺症により自動車整備士の仕事にも支障をきたしています。利き腕の右手を骨折させられたため、左手での作業を強いられています。
佐伯秀行さん
「朝起きた時はとても悪くて、指があまり曲がらない状態を、朝からちょっと自分でリハビリみたいな感じで伸ばして…」
一方で、加害者の男性から直接の謝罪はなく、十分な賠償もありません。
佐伯さんは、懸命なリハビリを続けながら完全復帰を目指しています。
佐伯秀行さん
「引退するにはまだ若いですから、なんとか元の仕事に就きたいと頑張ってます」