「非正常に慣れてしまった」ウクライナ人画家の嘆き 滋賀で滞在制作、平和願い絵筆に

浄厳院に滞在しながら制作活動をしているルイーザさん(右端)とスペイン・カタルーニャの3人のアーティストたち=近江八幡市安土町

 ウクライナの油絵画家マリア・ルイーザ・フィラトヴァさん(24)が、昨年に引き続き来日し、近江八幡市安土町の浄厳院で制作活動に取り組んでいる。平和への願いを絵筆に込め、滋賀の穏やかな風景などをテーマにした作品を描いている。

 浄厳院では昨年から、海外の芸術家が地域で共同生活をしながら作品を制作する「アーティスト・イン・レジデンス」事業が行われている。事業は長浜市を拠点にしているアーティスト西村のんきさん(66)が代表を務める「AT ARTS」が企画しており、昨年のイベント後に帰国したルイーザさんは、西村さんから連絡を受けて再び参加を決めたという。

 ウクライナ南東部ザポロジエに暮らしていたルイーザさんは、戦火が迫り避難。現在、西部ウジホロドで生活している。

 ルイーザさんは、侵攻が長期化する現状について「よくないことだが、正常ではない状態に段々慣れてしまってきている」と語る一方、平和を求める気持ちは強い。滞在中、寺周辺に広がる風景をテーマにした作品を中心に手掛けている。それは日常の風景が一瞬にして奪われる可能性があると実感する体験をし、「この景色を守らなければならない」との強い思いがあるからという。

 レジデンス事業には、いずれもスペイン・カタルーニャの陶芸家プロヴィデンシア・カザールス・マスフェレールさん(60)、カタルーニャの文化をテーマに活動するライターのジョセップ・バザールト・サラさん(63)、画家リディア・マスヨレンス・ヴィラさん(56)の3人も参加している。

 カタルーニャはスペインからの独立問題を抱えており、ジョセップさんは「みんなが思っているほど、ヨーロッパは平和ではないということを知ってほしい」と訴えている。

 4人のアーティストたちの作品は10月21日~11月5日に浄厳院で展示される。

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