長崎くんち 演者も観客も盛り上げる 八坂神社「マイク方」の江頭さん 演し物や踊町の歴史紹介

「くんちが大好き」と語るマイク方の江頭さん=長崎市、八坂神社

 長崎市の諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」が7日開幕する。「1年のカレンダーは(小屋入りの)6月1日から始まる」。そう語るのは、八坂神社(鍛冶屋町)で20年以上「マイク方」を務める江頭響さん(60)。4年ぶりの本番を前に、会場の全員が楽しめるよう意気込んでいる。
 「マイク方」は奉納踊りの会場で、演(だ)し物や傘鉾(かさぼこ)の説明や踊町の歴史などを観客に紹介。江頭さんは、中日(なかび)(8日)の八坂神社での奉納を担当している。
 籠町生まれ。出演経験はないが、くんちがあると学校を休み、祖父母と見に行った。路面電車が走る音や工事のショベルカーの音がシャギリや鉦(かね)の音に聞こえ、普段から演し物のまね事をして遊んでいた。
 1995年、マイク方の後任を探していた同神社の市原慶彦前宮司と知り合い、その場の勢いで「立候補してしまった」。図書館で本を読み、稽古に通い勉強。得た知識を各踊町が奉納する30分間でしっかり伝えた。
 踊町が一回りした7年後。前回の映像を見ると、観客は奉納に夢中で、解説を注目して聞いていないことに気付いた。「余計な話はいらない。肝心なことだけ伝えて、あとは感じてもらうのが一番なんだ」。その年から試行錯誤を始めた。
 「傘鉾が回った時に、垂れのすき間を見てみてください。きっと幸せになれますよ」。今では、踊町の成り立ちや演者の思いなどの情報と、観客が奉納踊りを見たくなるようなワンポイントを選んで話す。演者も観客も楽しめるよう、かけ声も全力だ。
 江頭さんによると、八坂神社の観客は常連が多く、にぎわうので、初心者も楽しみやすいという。小西隆宮司は「江頭さんのおかげで盛り上がっている」と信頼を寄せる。
 コロナ禍で多くのことが変わった。だが、開催中止が決まった2020年の小屋入りの日、諏訪神社に行くと、自称「くんちばか」の仲間や踊町関係者がいた。中止された3年間、寂しかったが、くんちは変わらず長崎の人たちの日常に溶け込んでいた。
 4年ぶりのくんちは体力的に心配な面もあるが、それでも関わっていたい。理由はただ、くんちが大好きだから。「くんちの魅力とか、もう分からないくらい好き。自分が一番楽しんでる」。今年も八坂神社を全力で盛り上げ、楽しむ江頭さんの声が響くだろう。

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