2030年ワールドカップで起きること……「6つの国、5つのタイムゾーン、3つの大陸、2つの季節」で開催

写真:かつてない規模で行われる大会はどんなドラマを生むのか ©Getty Images

FIFAは10月4日、2030年のワールドカップをスペイン、ポルトガル、モロッコの3カ国で共催することを発表した。また、1930年にウルグアイで行われた第1回大会から100周年となることを記念して、開幕ゲームからの3試合をウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイで実施することも併せて発表している。つまり2030年大会は、3大陸6カ国で開催されることになる。これがどのような意味を持つのか、イギリス『BBC』電子版が紹介している。

この大会はヨーロッパ、アフリカ、南米という3つの大陸で開催される。つまり、北半球と南半球で同時に開催される初めての大会ということになる。大会が行われる6月から7月にかけては、北半球は夏であり、南半球は冬になる。6月のウルグアイやアルゼンチンの平均気温は8℃から15℃。それに対し、モロッコは30℃を超えることもあり、スペインやポルトガルは7月に入ると35℃に達することもある。ただ、ウルグアイ、アルゼンチンよりも北にあるパラグアイは6月の平気最高気温が23℃とやや暖かいため、選手たちは様々な気候に適応しなければならない。

最大の問題は移動だろう。開催都市と大会全体のスケジュールが発表され、グループ分けの抽選会が行われるまで、出場国は様々な計画を自重する必要に迫られるかもしれない。南米開催を引き当ててしまった場合、大陸間の移動に多大な費用が加算される可能性が高いからだ。

また、スペインと南米3カ国との間には5時間の時差がある。2026年大会はカナダ、アメリカ、メキシコで開催され、アメリカ本土の東海岸と西海岸の時差は3時間なので、それよりも大きな時差にも対応しなければならない。

そして、スペインからアルゼンチンまでの平均飛行時間がおよそ13時間かかるなど、移動時間もかなり長くなる。南米まで移動するチームとしないチームとでは、コンディション面で差が出ることは明らかだ。

長距離移動を強いられるチームも大変だが、観客も厳しい現実に直面する。イングランド代表を追い続けるサポーターのガーフォード・ベック氏は「ファンにとっては悪夢だ」と語り、過去の経験を踏まえながらFIFAの決定を批判した。

「ロシア大会(2018年)は酷いものだった。準々決勝の試合を見るためにモスクワからサマラまで移動するのに、電車で片道18時間もかかった。ファンは3カ国や6カ国でのトーナメントは望んでいない。FIFAはそのことを理解していない」

2030年のW杯は「6つの国、5つのタイムゾーン、3つの大陸、2つの季節で行われる“1つの大会”」となる。果たして成功を収めることはできるだろうか。

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