「居酒屋倒産」が急増 過去2番目の81件 コロナ支援終了と深刻な物価高、人手不足

~ 2023年度上半期(4-9月)「居酒屋の倒産動向」調査 ~

2023年度上半期(4-9月)に発生した酒場、ビヤホールなど「居酒屋」の倒産は、81件(前年同期比80.0%増)で、年度上半期では過去最多の2020年度同期(92件)に次ぐ、2番目の高水準となった。
コロナ禍による外出自粛や急激な客の減少で92件が倒産した2020年度上半期以降、持続化給付金や様々な支援で居酒屋倒産は2年連続で減少していた。だが、新型コロナの5類移行後も、以前の水準まで客足が戻らないなか、物価高や人手不足など深刻な経営リスクが重なり、ここにきて再び大幅な増加に転じている。

2023年度上半期に倒産した居酒屋81件のうち、「コロナ関連」倒産は最多の54件で、構成比66.6%は過去最大を更新。コロナ関連支援の終了、縮小のタイミングで増勢を強めている。
日本フードサービス協会が9月に公表した2023年8月度の「外食産業市場動向調査」によると、「パブ・居酒屋」業態の売上高は、2019年同月の66.5%にとどまっている。アフターコロナで観光地や繁華街などへの人流は回復したが、コロナ禍の生活様式の変化が広がり、居酒屋の客足はコロナ禍前の2019年以前に戻っていない。
一方で、食材や光熱費の上昇で提供コストが増加している。東京商工リサーチが8月に実施したインボイス制度に関するアンケート調査では、「免税事業者との取引を中止・縮小する」との回答は「飲食店」が26.0%と業種別で最も高かった。ただ、仕入先が農家などの小規模事業者でインボイス登録していなくても、商材変更は容易でなく、税負担が業績に影響する可能性もある。
また、居酒屋などの飲食業態は、コロナ禍の休業、時短営業などで人員削減を進め、感染懸念による離職も少なくなかったが、その反動が今、深刻な人手不足をもたらしている。
コロナは落ち着くが、居酒屋を取り巻く環境は厳しく、倒産は高止まりが続く可能性が高い。

※本調査は、日本産業分類の「酒場,ビヤホール」の2023年度上半期(4-9月)に発生した倒産(負債1,000万円以上)を集計、分析した。


居酒屋倒産、2023年度上半期は66.6%が新型コロナ関連

2023年度上半期(4-9月)の居酒屋倒産は81件だった。居酒屋の倒産は、コロナ禍の休業や時短営業、酒類提供の停止などで飲食業倒産が過去最多だった2020年度上半期は、過去最多の92件を記録した。その後、コロナ禍の手厚い支援が奏功し、2021年度同期、2022年度同期と2年連続で大幅に減少した。しかし、支援の縮小・終了やアフターコロナでの売上回復の遅れもあって、2023年度上半期は3年ぶりに増加に転じ、過去2番目の高水準となった。月次でも、居酒屋倒産は2022年2月から8カ月連続で前年同月を上回っている。
コロナ関連倒産は2023年度上半期は54件(前年同期25件)発生し、居酒屋倒産の66.6%(前年同期55.5%)を占めた。年度上半期としては、2021年度上半期の59.2%を7.4ポイント上回り、コロナ関連倒産の割合が最大となった。

原因別 『不況型』倒産が約9割

原因別は、最多が「販売不振」の69件(前年同期比86.4%増、前年同期37件)で、居酒屋倒産に占める構成比は85.1%だった。以下、「他社倒産の余波」の5件(同150.0%増、同2件)、「既往のシワ寄せ」(同50.0%増、同2件)と代表者体調不良等を含む「その他」(同200.0%増、同1件)の各3件の順。
「事業外の失敗」と「運転資金の欠乏」は、それぞれ前年同期の1件からゼロに減少した。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は72件(同84.6%増、同39件)だった。居酒屋倒産の約9割(88.8%)を占め、前年同期の86.6%を2.2ポイント上回った。

形態別 消滅型が98.7%

形態別では、破産が79件(前年同期比83.7%増)で、居酒屋倒産全体の97.5%(前年同期95.5%)に達した。特別清算の1件(前年同期ゼロ)と合わせて消滅型は80件(構成比98.7%)となった。
居酒屋倒産は、再建の見通しが立たず、事業継続を諦めて消滅型の法的倒産に踏み切るケースがほとんど。

資本金別 「1千万円未満」が9割

資本金別では、「1千万円未満」が73件(前年同期比87.1%増、前年同期39件)で90.1%(前年同期86.6%)を占めた。内訳は、「1百万円以上5百万円未満」が31件(前年同期比72.2%増)、「個人企業他」が30件(同76.4%増)、「5百万円以上1千万円未満」が8件(同300.0%増)、「1百万円未満」4件(同100.0%増)。
一方で、「1千万円以上5千万円未満」は7件(構成比8.6%、前年同期6件)「5千万円以上」は1件(同1.2%、同ゼロ)にとどまり、居酒屋倒産は、体力の乏しい過小資本の中小・零細企業が9割以上となっている。

都道府県別 増加16、減少15、同数16

都道府県別では、増加が16都府県、減少が15道府県、同数が16県だった。
増加したのは、東京5→15件、福岡2→11件、大阪1→9件、愛知2→7件、群馬0→4件、兵庫3→4件、三重0→3件、熊本0→3件、千葉1→2件、神奈川1→2件、岡山0→2件、山口0→2件、富山0→1件、広島0→1件、愛媛0→1件、宮崎0→1件の16都府県。
地区別では、9地区中、6地区で増加した。関東(13→26件)と近畿(14→18件)、九州(5→15件)、中部(6→12件)の4地区では、居酒屋倒産が10件以上発生した。北海道(3→2件)と東北(3→1件)で減少。四国は前年同期と同件数(1件)だった。

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