「コロナ防止ルール違反の処分不当」JRAと調教師の訴訟、和解成立

大津地裁

 競馬場で新型コロナウイルスの感染防止対策のルールに違反したことを理由に、日本中央競馬会(JRA)から厩舎(きゅうしゃ)の馬房削減処分を受けたのは不当として、栗東トレーニングセンター(滋賀県栗東市)所属の須貝尚介調教師が、JRAに約700万円の損害賠償を求めた訴訟が大津地裁で和解が成立したことが6日、分かった。和解は9月6日付。

 訴状などによると、JRAは2020年10月上旬、レース後の優勝馬の記念撮影について、同月10日以降は、GⅠレースに限り調教師が馬主らと撮影することを認め、騎手は参加できないことを各調教師にメールで通知。須貝氏は同日のGⅢレースで管理馬が優勝した際、馬主のほかに、騎手とも写真撮影した。JRAは「調教師としての自覚を著しく欠き、競馬開催の継続を脅かす重大な行為」として、21年3月1日以降、須貝氏に貸し付ける厩舎の馬房数を28から2減とする処分をした、としている。

 須貝氏は同年9月に提訴。訴状で、通知のメールにあった「GⅠ競走」を「G競走」と見間違えた上に、「騎手参加不可」の記述を見落としたが、撮影時に周囲にいた十数人のJRA職員は誰も注意しなかったと主張。馬房数の削減で収入が減少したとして減収分や慰謝料を求めていた。

 和解条項には、須貝氏が写真撮影を行ったことについて、JRAが定める基準にある「不適当な行為」に当たると認めるほか、JRAが来年3月以降に実施する馬房の増減に関する査定で、今回の写真撮影について、JRAが定める「馬房の加増にふさわしくないと認めた者」に須貝氏が該当しないことを確約する内容が盛り込まれた。須貝氏は賠償請求については放棄した。JRAは「和解したことは承知しているが、特にコメントすることはない」としている。

© 株式会社京都新聞社