冬の山寺、新たな魅力創出 山形市が訪日客向けツアーを初企画

今冬のインバウンド向けツアーで、特別拝観を実施する立石寺の根本中堂=山形市山寺

 山形市は本年度、冬の山寺で特別拝観やライトアップなどを盛り込んだインバウンド(訪日客)向けツアーを初めて企画する。山寺は歴史や神秘性から海外でも人気があるが、冬季はスキー、樹氷といったコンテンツを抱える蔵王の陰に隠れてしまいがちだ。新たな魅力を創出して蔵王を訪れる観光客の取り込みなどを進め、市内の周遊促進や滞在日数の増加につなげる。

 ツアーは来年1~2月の実施を予定する。冬季は閉鎖となる立石寺根本中堂(国指定重要文化財)の拝観、約1200年受け継がれる「不滅の法灯」の見学、住職による法話、座禅体験などを企画する。雪化粧された幻想的な風景のライトアップや地酒、郷土料理の振る舞いなども行程に盛り込み、山寺ならではの特別な体験を提供する。

 山寺観光協会の遠藤正明商工事務部長は「県民であっても、冬に入山できると知らない人が多い」と話す一方、「海外の人は雪に対する感動が強いこともあって、『美しい景色だ』と言ってくれる」と山寺の誘客力に期待する。「新たな魅力を国内外に発信し、来年度以降も継続することができるツアーの仕組みをつくりたい」と意気込む。同協会の外国語ガイドチーム「Yamaderans(ヤマデランズ)」が中心となり、観光案内の多言語化を一層推進する契機にもしたい考え。

 ツアーは、新型コロナウイルス禍からのインバウンド回復の起爆剤として、各地の特色を生かした取り組みを支援する観光庁の「観光再始動事業」に採択された。事業費約2554万円のうち約7割の助成を受ける。関連経費を盛り込んだ2023年度一般会計補正予算案が開会中の市議会9月定例会に提出された。

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