秋の大祭・長崎くんち きょう4年ぶりに開幕 「シャギリ」「白トッポ組」「年番町」 “裏方”たちの熱い思い

4年ぶりの長崎くんちを前に、準備が進む諏訪神社=長崎市上西山町

 長崎のまちに、秋のにぎわいが帰ってくる-。諏訪神社(長崎市上西山町)の大祭「長崎くんち」が7日、開幕する。六つの踊町による演(だ)し物の奉納で始まり、神輿守(みこしもり)町が諏訪、森崎、住吉のみこし3基を担ぎ、同神社からお旅所(元船町)まで練り歩く。新型コロナ禍などの影響で4年ぶりの開催。9日までの3日間、くんちを支える“裏方”たちも、熱い思いをみなぎらせている。
 「シャギリの音色が聞こえたら、長崎人はくんちを思い出す」-。東長崎の5地区でつくる「長崎シャギリ保存会」の山田運三組合長(74)は胸の高鳴りを抑えきれない。同保存会は今年、20歳から74歳までの約50人が出演。夏から2カ月間、毎日稽古を重ね、月1回、町ごとに音合わせをしてきた。半世紀近くシャギリを伝承する山田組合長だが「何年たっても初舞台のように緊張する。町中に響き渡る音を出したい」。
 諏訪神社の奉納踊りを盛り上げるのは「長坂連白トッポ組」。白いトッポ袖(筒袖)の法被を着て、アンコールを意味する「モッテコーイ」「ショモーヤレ」のかけ声を誘う。奉納前には観衆にかけ声の練習を呼びかけたり、退場する踊町へ歓声に応えるよう交渉したりもする。18歳から加わる山本康平さん(34)は「見ている人たちを盛り上げたいし、踊町には応えてほしい。観衆もそれを待っている」と気合十分。
 山本さんは籠町が踊町の年は出演するが、今年は各町が庭先回りで訪れる湊公園(新地町)の警備などを担当。9月中旬まで続いた各踊町の稽古に、長男翔龍君(10)=市立愛宕小5年=も初めて参加。慣れた手ぶりで「モッテコーイ」と呼びかけた。いよいよ本番。「くんち好きのDNA」を受け継ぐ翔龍君が澄んだ声を響かせる。
 踊町を務めて4年後の町が担当する「年番町」は、諏訪神社の氏子代表として祭事全般を取りしきる。中でも大仕事となるのが長崎くんちの調整。3日間は諏訪神社やお旅所の踊(おどり)馬場の運営、お下りとお上りのお供などをする。
 今年の年番町は油屋町、今籠町、上町、鍛冶屋町、筑後町、中町、元船町の7カ町。幹事町の元船町自治会、中川進吾会長(71)は年番町の役割の一つを「継承」と位置付け、「『3年後は踊町として奉納する』という意識を町の人に持ってもらう」と語る。この3年間、毎年くんちの素案を作っていた。「ずっと気が張っていて、わくわくする気持ちと早く無事に終わってくれという気持ちがある。踊町や神輿守町の努力が報われるよう無事に奉納できれば」
 お旅所周辺の交通規制が6日朝から始まり、屋台設営などが本格化。「ベビーカステラ」の屋台を出店する諫早市の男性(39)は「長崎県人として、くんちがないと盛り上がりに欠けて寂しかった。今年は曜日が良いので人出も多いだろう」と期待。多くの関係者やファンが、待ちに待った3日間の幕が上がる。

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