【MLB】王者の経験か、伏兵の勢いか ドジャース対Dバックス ディビジョンシリーズプレビュー

写真:ワイルドカードシリーズ第二戦、コービン・キャロルが逆転のホームイン

ドジャースとダイヤモンドバックスの戦いは、まさに王者と伏兵の戦いだ。

まずは両チームの今季について見ていこう。まずは地区王者、ドジャースからだ。

シーズン前、今季のドジャースに対する評価は高くなかった。贅沢税超過を防ぐためなどの理由から、積極的な大型補強を避け、ベテランの一年契約を乱発してシーズンに臨んだからだ。このような状況から、いくつかの媒体ではドジャースではなく、パドレスがナ・リーグ西地区を制すると見る論調も少なくはなかった。

それにも関わらずドジャースが今季も100勝を挙げられたのは、一つにその単年契約ベテラン勢の予想外の大活躍があったこと。そしてもう一つはムーキー・ベッツとフレディ・フリーマンのこれまた予想以上の大活躍だ。ジェイソン・ヘイワードやJDマルティネスが主力級のはたらきを見せなければ、チームの状況はもっと思わしくなかっただろうし、ベッツやフリーマンが30歳を過ぎてなおキャリアハイに迫る成績を残さなければ少なくとも100勝に手が届くことはなかっただろう。

そういった意味で言えば、今季のドジャースを支えてきたのはまさにベテランの経験と言えるかもしれない。野手の平均年齢は30.9歳で、30球団中最も高い。彼らやチームが黄金期に培ってきた経験は、このポストシーズンにあっても大きな武器となるだろう。

一方、圧倒的な若さと勢いを武器とするのがダイヤモンドバックスだ。今季の開幕前、Dバックスがポストシーズンに進出すると予想した媒体はほとんどなかった。いくら再建が進んでいたとはいえ、2年前にシーズン110敗を喫したチームがポストシーズンに進出すると予想するのは簡単ではない(実際には110敗した2チームともにポストシーズンに進んだわけだが)。

今季のDバックスの躍進を支えたのはコービン・キャロル、ガブリエル・モレノ、ヘラルド・ペルドモらの「23歳世代」。現在のスターティングメンバーにはポストシーズンどころか、シーズンを通してMLBで過ごすのも初めてという選手が少なくない。彼らのブレークなしにDバックスのポストシーズンはありえなかっただろう。

また、彼らの脇を支えたベテランの存在も忘れてはいけない。クリスチャン・ウォーカーやケーテル・マーティ、メリル・ケリーといった110敗時代の主力がキャリアハイに近い成績を残したこともポストシーズン進出につながっている。彼らの多くはこれが初めてのポストシーズンだ。これまで日の目を見ることが少なかった伏兵たちの存在が、チームをここまで連れてきたといえよう。

さて、そんな両チームの戦いはどのようになることが予想されるだろうか?

まず、攻撃力の面では間違いなくドジャースに軍配が上がるだろう。突出した成績を残しているのはベッツとフリーマンの2人だけだが、この2人の存在自体が圧倒的な強みとなっている。彼らがシーズン中と変わらぬ打力を維持するだけでも相手を上回る攻撃力を発揮することができるだろう。Dバックスとしては、この2人をいかに抑えるかが勝利につながるカギとなるはずだ。

一方、投手力を含めた守備力の面ではDバックスに軍配が上がりそうだ。現在のドジャースは多くの主力先発投手を故障などで欠いており、クレイトン・カーショウに続く先発投手は1年目のボビー・ミラー、シーズン防御率5.73のランス・リンになってしまう。(少なくとも短期決戦を戦う上では)ザック・ギャレンとケリーの二本柱が健在のDバックスに比べれば見劣りすると言わざるを得ない。

野手の守備力という点ではMLBの屈指の守備力を誇るDバックスが圧倒的に上回ることを考えると、総じてみれば守備面ではDバックスに分があるだろう。先発投手で差をつけ、接戦に持ち込むことができればドジャースをおびやかすことができるかもしれない。ドジャースとすれば、ギャレンとケリーに抑え込まれ、先に2勝されてしまうような展開は絶対に避けたいところだ。

王者が経験と貫禄で押し切るか、それとも伏兵が勝ち上がった勢いで大物食いを決めるか。第一戦は日本時間10月8日の10時20分試合開始だ。

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