野外で独自の演劇世界 黒部シアター開幕

観客を魅了した劇団SCOT出演「トロイアの女」の一幕=黒部市の前沢ガーデン野外ステージ

  ●劇団SCOT・鈴木さん構成

 黒部舞台芸術鑑賞会実行委員会の「黒部シアター2023秋」は7日、黒部市の前沢ガーデン野外ステージで開幕した。19年開催の国際演劇祭「シアター・オリンピックス」で生まれた黒部の舞台芸術文化の芽を育む公演で、約200人が劇団SCOTを主宰する世界的演出家、鈴木忠志さんの独自の演劇世界に浸った。

 演目は「トロイアの女」で、約2500年前に戦争の過酷さを描いたギリシャ悲劇の傑作を、鈴木さんが現代的視点から構成した代表作。開演前に雨が降り、冷え込んだ空気に包まれた自然の中のステージで、鈴木さん独特のトレーニング法で鍛え上げられた役者が緩急自在に熱演した。

 悲惨な出来事が起こる舞台中央には神がたたずんでいるものの終始動かず、一言も発しないままで、戦時における宗教の意味合いも問い掛けた。

 上演後、堀内康男実行委員長が「今も世界で戦争、紛争が絶えない中、それぞれが何かを感じ取ってほしい」とあいさつ、鈴木さんは野外ステージの恵まれた環境を挙げ、黒部シアターを継続開催することで舞台芸術の裾野を広げていく意欲を示した。

 8日も午後6時から上演される。

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