よゐこ有野、【配当金】を狙う投資手法に困惑「負け犬に投資って…」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年10月は金融アナリストの三井智映子先生に、株式投資について伺いました。

今回は、「配当」について解説いただきます。


有野晋哉(以下、有野):先生、前回ちょっと「東京ゲームショウ2023」の話をしたじゃないですか?

三井智映子(以下、三井):どうされたんですか、急に(笑)

有野:いやね、その時に遊ばせてもらった、これから発売予定のソフト「ゲームセンターCX 有野の挑戦状1+2 REPLAY」って、僕がこれまでゲームセンターCXやってきたようなレトロゲームを集めたような感じなんですけど、先生ってゲームはするんですか?

三井:最近は、ヒットしそうなスマホゲームを少しだけ触ることはありますが、あくまでそれは投資のヒントを得るためなので、本腰を入れてゲームを遊ぶことは、それほどないですね。

有野:そうなんですね。僕は子どもの頃はゲーム大好きでもなくって、大人になって一人暮らし始めて、東京で友達が居なくてゲームにハマりだした“にわかゲーマー”やったんですよ……いや、話したいのはそういう話じゃなくて、僕がレトロゲームにどっぷり浸かってた頃って、確か金利が凄く高かったんですよね?

三井:実際に私が高金利時代を体験したわけではないのですが、有野さんが上京されるより少し前の1990年前後は、郵便局の定期預金で5%を超えていた時もあったようですね。

有野:5%かぁ~、100万円を預けたら1年で105万円になる。リスクなしでそんだけ増えるって、かなりオイシイですよね。

三井:金利5%で預けたとすると、利子も元本に加える複利で続けると、約15年で倍になる計算ですね。

日経平均採用銘柄でも、配当利回りには大きな差がある

有野:15年で倍か~、それなら無理して株をやらんでも、銀行に預けてたらええか、って話になりますよ。

三井:そうですね。今は米国では金利が上がっているのですが、日本はマイナス金利策なので難しいですよね。株式投資ではそれ以上の大きな利益を得られる可能性はありますが、その分、投資リスクもあります。金利が5%なら、株式投資をやる人は減るかもしれません。確かに、日本の長期金利は日銀のゼロ金利政策によって低くおさえられてきましたが、最近はインフレによって金利の上昇圧力が高まっているので、ジワジワ上がってきています。

有野:おぉ、じゃあ昔みたいに高金利になる日が来そうですか?

三井:金利はジワジワと上昇していますが、昔のように預金金利が5%とか6%の時代に戻る可能性は、いまのところ低いと思います。前回もお話ししたように、これからインフレが進みそうなので、株式を含め、インフレに強い金融商品に投資はしておくべきだと思います。

有野:戻らへんか、やっぱりそうですよね。この連載でも、何人かの先生がそうおっしゃっていたので、貯金の金利で増やすって無理そうやから、僕も「ちゃんと投資せなあかんなぁ~」って気になってはいるんです。

三井:いい心がけですね! でしたら、高金利時代の再来を待たなくても、もしかしたら「年利5%」に近い成績は、株式投資で達成できるかもしれませんよ。

有野:えっ、そうなんですか!? 何か特別なやり方があるんですか?

三井:いえ、株式投資では王道の1つと言える手法で、「高配当狙い」と呼ばれています。

有野:高配当か~、授業でも聞いたことありますけど、結局は株だし、高配当狙いやと、それだけリスクもあると思うねんけど……。

三井:そう露骨にガッカリしないでください(笑) 高配当狙いは、昔から確立された株式投資の手法の1つなんです。そもそも、「配当」ってどのようなものかご存じですか?

有野:はい、企業が稼いだお金の中から、株主に配分するお金ですよね。藤川先生が「不動産の家賃収入みたいなもの」って言ってました。

三井:そうですね。企業の株を持っていると、株主には保有株の数に応じて、その企業から利益の還元を受ける権利が発生します。1株当たり100円の配当がもらえるなら、100株持っていれば1万円です。配当金の額は、企業が稼いだ利益の額や、会社ごとの方針によっても変わってきます。

有野:へぇ〜、そんなに会社によって変わるもんなんですか?

三井:現状で、日経平均株価に組み入れられている「日経225社」の配当利回りの平均は年間ベースで2.1%程度ですが、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドやユニクロを運営するファーストリテイリングのように、今期の予想配当利回りが1%以下の会社もあれば、JT(日本たばこ産業)のように5%を超えている会社もあります。

有野:同じ上場企業ですよね? なのに、そんなに差があるもんなんや!

三井:会社の方針や、その年の利益の状況によっても、配当金の額は増えたり減ったりします。まだ新しい企業で、会社が株主への配当より成長に向けた投資を重視している場合は、どうしても配当利回りは低くなりますね。

「負け犬」への投資法が有効!?

有野:それじゃ、配当利回りの高い順に買うのが正解、ってことですか?

三井:配当利回りを狙うのであれば、そういう考え方もあるということです。実は、本当にそういう投資の仕方があるんです。たとえば米国では、米国の代表的な企業で構成されている「NYダウ」という株価指数があるんですが、そのNYダウの構成銘柄の中から、その年の配当利回りが高い10銘柄をピックアップし、その銘柄を買うという手法で、「ダウの犬」と呼ばれています。

有野:ダウの犬? おもろいネーミングですね(笑) 犬って表現、イメージだと「国家権力の犬」やら、あんまりいい表現じゃないけど、なんで犬なんですか?

三井:配当利回りは、「株価÷年間の配当金」で算出される値なので、株価が上がると配当利回りは下がります。「ダウの犬」という投資手法は、NYダウの構成銘柄の中でも、株価があまり上がっていない銘柄を選び出すことになるので、株価が低い「負け犬(Underdog)」に投資するという意味で、「ダウの犬」という名称になっているようですね。

有野:「負け犬」って(笑) でも、負け犬に投資するのって、なんか嫌やなぁ。

三井:NYダウには、アップルのようなIT企業もあれば、コカ・コーラのような歴史ある老舗企業も入っているのですが、比較的収益や配当が安定している企業が多いんです。それに、「ダウの犬」投資法は、1年に1回、保有する銘柄を配当利回りの高い順に買い直すというシンプルなものなので、すごいラクなんですよ。

有野:そんな買い直したりしないと、ずっと持ってるだけじゃダメなんですか?

三井:先ほども言ったように、配当は業績、引いては景気の波によって増減するので、年に1回は見直しが必要です。米国株だと馴染みがないという場合は、「日本版ダウの犬」でもアリだと思います。

有野:おぉ、日本版もあるんですね! 僕は「配当金の犬」です。配当金が増えるためなら、バンバン尻尾振って、ク〜ンク〜ン鳴きますよ。で、どんな企業が入ってくるんですか?

三井:「日本版ダウの犬」は、ダウ平均の代わりにTOPIXコア30から銘柄を選びます。TOPIXコア30 は、TOPIXの構成銘柄のなかで時価総額と流動性が特に高い30銘柄で構成されている指数で、その30銘柄の中からその年の予想配当利回りの高い順に買うわけですね。今期だとトヨタ自動車やソニーグループ、三菱UFJ銀行やキーエンス、NTTが「日本版ダウの犬」に入ってくると思います。

有野:なるほど、こっちのほうが馴染みのある企業が多そうですね。

三井:いずれにしても、メンテナンスの手間はありますが、5%に近い配当利回りを得られる可能性がある手法だと思います。

注目したい「連続増配」銘柄

有野:配当狙いって、ずーっと同じ銘柄を持ち続けるだけかと思ってました。ダメと思ったら、買い替えなあかんわけですね。

三井:確かに、配当狙いの投資は長期的な視点で銘柄を持ち続ける手法ではあります。株式投資、特に個別銘柄への投資の場合は、株価の値動きにしたがって含み益、含み損が露骨に出るので、どうしても日々の相場の上下次第で一喜一憂してしまいがちです。そうなると精神的にも疲れてしまって、プライベートやお仕事に影響するかもしれません。

有野:それはそうやろなぁ。僕はまだNISAとかiDeCoで投資信託を少し買っているだけで、大金を投資しているわけじゃないですけど、それでも損をしてるとヘコみますもん。もし、何千万円とか投資してて「うわぁ、数百万円の損が出てる~!」ってなったら、いくら長期投資っていっても、なかなかテンション上がらんと思います。

三井:仮に、持っている銘柄の年間配当利回りが5%だとすると、20年間持ち続ければ、投資元本は回収できるんです。10年間の保有なら、この間、株価が半値になってもトータルではトントン。もちろん、企業の業績が悪化することで減配や、無配転落によって株価が大きく下がる可能性はありますが、「高配当を得られている」ことが、安心感につながるのは間違いないですね。

有野:高配当狙いで持っていて、株価がグッと上がった場合は売ったらダメなんですか?

三井:少し儲かっていると、どうしても売りたくなってしまうのが人情ですが、「高配当狙い」で長く持つと決めた以上は、「高配当」という前提が崩れない限りは持っておくべきですね。私は、株式投資をする上で、「自分が買った理由が崩れたら売る」をマイルールにしているのですが、逆にいうとそれは、「買った理由が崩れていなければ持ち続ける」ことになります。

有野:マイルール、信念ですね。でも、株価が下がったら、持っているのが怖くなってしまいそうですけど……。

三井:確かに、いくら高配当だったとしても、1銘柄だけを買うのは、その銘柄に予想外の出来事があって、業績が悪化して株価が下がるリスクはありますから、不安ですよね? ただ、全く違う業種や業態の銘柄に分散して投資しておけば、株価が下がるリスクをおさえられます。これは高配当株に限った話ではなくて、株式投資全体についても意識しておくべきことですけどね。

有野:さっきの「ダウの犬」みたいに、先生オススメの高配当株への投資法はないんですか?

三井:日本では「配当利回りランキング」で上位の銘柄が注目されがちですが、米国ではその年の1年だけ配当が高い銘柄より、「安定配当」や「連続増配」、つまり安定して配当を増やし続けている企業が注目される傾向があります。そういう点で、たとえば33期連続で増配を達成している花王や、21期連続増配のユニ・チャームなど、1年当たりの配当利回りはそれほど高くなくても、安定したビジネスモデルを構築していて、安心して持ち続けられる銘柄に目を付けるのはアリでしょう。

有野:なるほど! ジェットコースターみたいに上がり下りがある企業よりも、安定して右肩上がりの方が、ずーっと配当を増やして、業績も安定しているわけだから、これから先、長い間持ってても安心できるんじゃないか、ってことか。

三井:連続増配中の企業に投資する投資信託やETF(上場投資信託)を買うのも一手だと思います。投資信託だと、先ほどの「ダウの犬」投資法のような見直し(リバランス)も自動でやってくれますからね。

有野:ちなみに、花王って株主優待はありますか?

三井:残念ながら、花王は株主優待をやってないんですよね。

有野:ないか~、残念(笑) 配当も気になるけど、個人的には株主優待がおもろそうやなぁ、って思うんですよ。

三井:では、次回は株主優待についてお話ししましょう!

有野:待ってました、よろしくお願いします!

次回(10月17日配信予定)は「株主優待」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

三井 智映子絵
「美しすぎる金融アナリスト」として話題となり、全国各地で個人投資家向けセミナーやIRセミナーに登壇。投資教育をライフワークとしている。 ZAI、SPA、マイナビ、FX攻略.com、DIME、ワッグルなどメディア掲載、連載の実績も多数。IRセミナーの構成作家やプロデュースも手がける。著書に『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門』(講談社)、『はじめての株価チャート1年生 上がる・下がるが面白いほどわかる本』 (アスカビジネス)がある。

ライター:新井奈央

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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