鮮烈デビュー

 貴金属や宝石の取引に「鑑定書」が存在しなかった頃、真贋(しんがん)や品質を判断するために用いられたのは黒くて硬い石英だったらしい。ゴリゴリとこすり付けて、物の硬度や輝度を確かめる。〈上手くいくかどうか見極めるためにやってみる物事〉を指す「試金石」は、元々この石をいう言葉だ▲それではホンモノかどうかを試してみましょう…。今季から国内最高峰のB1リーグで戦うバスケットボール男子の長崎ヴェルカ。開幕の相手は昨季2位の強豪・千葉ジェッツ▲この日を待ちわびた大観衆の熱い声援に後押しされながら“格好の試金石”を相手にごりごりと2試合。初戦、2戦目ともゲームの主導権を相手に渡すことなく、見事に勝ちきった▲「まぐれは2度続かない」-。スポーツ面の記事で新人記者の指が躍っている。そもそも、手が使えて得点がたくさん入るバスケットボールは「1度目のまぐれ」自体がなかなか起きない球技▲戦前の予想は“相手にとって不足がない”どころではなかった。昨季、60試合のレギュラーシーズンで、たったの7回しか負けなかったチームを立て続けに2度も負かしたこの強さと輝きは、紛れもなく本物だ▲いやでも期待が膨らむ鮮烈なデビュー。ヴェルカはこの先、長崎の私たちにどんな夢をみせてくれるのだろう。(智)

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