「気が利かねえな」に立腹…入所男性蹴り死亡させた元職員の男に懲役4年判決 短絡的、悪質さが高いと指摘

さいたま地方裁判所=埼玉県さいたま市浦和区高砂

 今年5月、埼玉県飯能市南川の特別養護老人ホーム「吾野園」で入所する男性=当時(90)=の背中を蹴って死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた、元同園職員の無職加藤肇彦被告(48)=秩父市野坂町2丁目=の裁判員裁判の判決公判が10日、さいたま地裁で開かれ、金子大作裁判長は懲役4年(求刑・懲役5年)を言い渡した。弁護側は執行猶予付きの判決を求めていた。

 金子裁判長は判決理由で、老人ホームの職員で入所者を介護する立場にもかかわらず、男性からかけられた一言に腹を立て犯行に及んでいて「短絡的で動機に酌むべき点はない」と説明。男性の体に衝撃が伝わることを認識しながら力加減せず脾臓(ひぞう)が破裂するほどの強さで蹴っていて「悪質さが高い」と指摘した。

 また、弁護側は被告が1人で数十人の入所者を見守る業務に従事していたことに加え実母の介護など生活上のストレスがある時期と重なったなどと主張していたが、金子裁判長は他の職員に応援要請が可能な体制だったなどとし、「ストレスは犯情として大きく考慮はできない」と述べた。

 判決によると、加藤被告は5月9日、入所者の男性から補聴器の電池交換を何度か要求され、その都度、断ったことで、男性から「気が利かねえな」と言われたことに立腹。男性が着座する車椅子の背もたれを右足で1回蹴る暴行を加えて脾破裂の傷害を負わせ、死亡させた。

 飯能署が暴行の疑いで逮捕し、さいたま地検が傷害致死罪で起訴していた。

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