定義が雑、住民への虐待…埼玉の「虐待禁止条例」に自治体首長らも難色 取り下げ受け「現場の声に耳傾けて」

県虐待禁止条例、自治体首長も難色 「定義が雑」

 埼玉県虐待禁止条例改正案は6日の埼玉県議会福祉保健医療委員会で自民、公明の賛成多数により可決されたが、「保護者に精神的・経済的負担を強いる」などの懸念からオンラインで全国的な反対署名活動が行われ、10日までに約10万筆が集まる事態となっていた。

 9日には、日高市や川越市、鳩山町などの無所属女性議員らが日高市で反対運動を行った。議員や市民の女性らは「改正は権利擁護という条例の本来の目的のためにならない。子育て世代が埼玉を離れる」「過剰で、住民への虐待のような条例。それがまかり通る議会に選挙でしてしまったのは私たち県民」などと通行人にアピール。チラシを受け取った1歳の息子がいる自営業の男性(37)は「子どもだけで遊んだらいけないというのはどうなのか」と困惑した。

 県内自治体の首長も難色を示し、県町村会長の井上健次毛呂山町長は10日、田村琢実団長に「改正による影響への配慮が全く示されず、実態と懸け離れ住民にも困惑が広がっている」と再検討を要望した。

 改正案取り下げ表明後、所沢市の藤本正人市長は記者団の取材に、「これだけの意見が出ている中で賢明だ。根本的に虐待をしてはいけないし放置もしてはいけないが、定義が雑だった。条例を作ることには慎重でなければならない」と話した。

 さいたま市の清水勇人市長は「市民から不安の声が寄せられていたことも含め、憂慮していた。条例改正は現場の声に耳を傾け、保護者らに理解を頂けるよう、丁寧に議論を行っていただきたい」とのコメントを出した。

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