撤回は「民意の勝利」も「問題は消えていない」 埼玉の「虐待禁止条例」案撤回、各会派議員ら早期決着に驚き

埼玉県虐待禁止条例案取り下げ、各会派反応

 埼玉県虐待禁止条例改正案の取り下げを受けて、県議会各会派はさまざまな反応を見せた。

 6日の福祉保健医療委員会で「子どもだけでの外遊びは自然だ」と追及した辻浩司議員(民主フォーラム)は「議席数が圧倒的な自民が世論を受け撤回することは県政史上例がない。民意の勝利」と評価した。ただ「虐待問題は消えていない。虐待には個別の状態などの要素があり、単純な線引きは実態に合わないと改めて感じた」とし、「本当に悪質な虐待を規制する改正に向けて提案や協力をしたい」と意欲を示した。

 一方、同委員会で所属議員が賛成に回った公明党県議団(蒲生徳明団長)は「通園バスや駐車場の車中に子どもを置き去りにし死亡する事故が多発し、意識啓発と行政に環境整備を求める内容に賛成した」とコメントを発表。委員会可決後に厳しい指摘や意見が数多く寄せられ、「条例を通した後の見直しを待っているようでは子育て現場の当事者に申し訳ない」と自民に再検討を促した。

 県民会議の井上航代表は「早期決着に驚いた。本会議でどう説明するか注目したい」と話す。「これだけ大きな権限が(最大会派に)ある。有権者も選挙での責任の大きさを感じたのでは」と今後の変化に期待を示しつつ、「対案への質疑はなく、議論を放棄された。上程前に超党派で議論をすれば県民が納得する条例を作れたはず」と指摘した。

 共産党県議団(城下師子団長)も「参考人招致や公聴会を提案したが、受け入れられなかった。議論を尽くせるよう、議会として双方向のチームをつくるなどの取り組みを求める」とコメントし、条例提案のあり方への再考を呼びかけた。

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