越前国府の施設区画跡か、平安後期以前の層から溝確認 福井県越前市発掘調査、所在地特定へ前進

越前国府の発掘調査で見つかった平安後期以前の溝の断面。国府内の施設の区画溝の可能性がある=10月11日、福井県越前市国府1丁目の本興寺境内

 福井県の越前市教委は10月11日、越前国府の所在地を探る「国府発掘プロジェクト」として同市国府1丁目の本興寺境内で行っている発掘調査で、平安後期以前の層から東西方向の溝を確認したと発表した。国府内の施設を区画していた溝である可能性があるとしている。古代の役人が使っていたとされる緑釉(りょくゆう)陶器や墨書土器も発見。これまで未解明だった国府の位置特定へ大きく前進した。

 プロジェクトは本年度から5年計画で、皮切りとして旧市街地にある本興寺で9月に着手した発掘調査の中間報告をまとめた。越前国府の発掘調査は1996年から行われてきたが、奈良・平安時代の本格的な遺構が見つかるのは初めて。

 発掘したのは境内の空き地約127平方メートル。人為的に掘られた幅約240センチ、深さ約70センチの溝が、平安後期以前の層の断面から見つかった。溝の規模や掘られた方向が東西の正方位に当たる特徴から、市教委は「国府内にあった役所などの官衙(かんが)施設の区画溝である可能性が考えられる」とみている。

 緑釉陶器は、鉛を主成分とした釉薬(ゆうやく)を施した陶器で、特別な材料や高度な製作技術を要するため、国府の役人が有していたとの見方ができるという。合わせて出土した須恵器の坏蓋(つきぶた)の外面には、墨で書かれた判読不明の文字の一部が残っていた。市教委は「文字を書けるのは当時、役所または寺の関係者に限られていた」としている。

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 越前国府は奈良、平安時代にかけ越前国の統治を担った中央政府直轄の官庁区域。文献や地理的な研究から、現在の越前市中心部にあったとされている。今後も発掘調査を継続し、所在を断定できる遺物や遺構の発見を目指す。

 市教委は15日、午前10時からと同11時からの2回に分けて一般向けの現地説明会を開く。同日午後1時~同2時と同2時半~同3時半には、小学3年~中学3年を対象にした子ども発掘体験会を開く。体験会の事前申し込みは市教委生涯学習・芸術文化課=電話0778(22)7459。

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