「地域を残していきたいと思うならば もっと知ってもらわないことには何も始まらない」山あいに暮らし 地域に解けこむ「山いき隊」が求められる理由【現場から、】

みなさんは、「山いき隊」をご存知でしょうか。総務省の制度を活用した浜松市の事業で、中山間地域の活性化を担う「浜松山里いきいき応援隊」の通称です。

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浜松市の山あいは、過疎と高齢化が深刻です。「山いき隊」の若者は、市から月およそ26万円を支給されながら、3年間の期限付きで現地で暮らし活動します。事業は今年で10年の節目です。「山いき隊」はなぜ必要なのか、取材しました。

10月1日から春野町の山いき隊に着任した中谷友亮さんです。30歳を機にメディア業界から転職、地元に貢献しようと東京から天竜に戻ってきました。まずは顔を覚えてもらうため、あいさつ回りの日々です。

<住民>
「農業やっている方、人手不足だもんで、そういう人を手伝ってもらえれば」

<中谷さん>
「力仕事頑張りたいと思います」

この先、行事のサポートやイベントで春野町を盛り上げたいと意気込んでいます。

引佐、天竜、龍山、春野、佐久間、水窪。発足してから10年の間で、全国から集まった50人の若者が「山いき隊」を務めました。

<浜松市市民協働・地域政策課 鎌倉久由副主幹>
「はじめの頃よりも、だんだん地域に解けこんで地域の一員として活動が活発になってきていると感じます。新しい目線で新しい事業が生まれたり(地域が)変わってきているのかなと」

水窪町の「山いき隊」の1人、山﨑洸一さん(23)です。

<山いき隊水窪担当 山﨑洸一さん>
「このお宅、空き家だったけどなくなっちゃったんだなとか、『山いき隊』が細かく気づいて記録していきたい」

千葉県出身で旅行好きな山﨑さん。かつて訪ねた水窪の風土や人柄にひかれ、住民と一緒に活動してきました。2024年3月に卒隊を控えています。

水窪は、浜松市の中心市街地から車で約2時間かかる山あいにあります。住民の数は減り続け、現在は約1,600人、65%以上が高齢者です。過疎・高齢化に加え、物理的な距離の問題も相まって、地域の最新情報や声が届きにくい状況です。

山﨑さんは、地域の知名度を上げることが最優先と考え、得意の写真を使い、水窪の発信を続けています。

<山いき隊水窪担当 山﨑洸一さん>
「浜松市のホームページをわざわざ見に行かないと、水窪って届かない場所で、水窪のはじめの一歩といいますか、そういった部分をサポートできるアカウント作りを目指してます」

PRだけでなく、2023年6月の大雨では、死活問題となる交通情報も図にまとめ、発信しました。

「こんにちは。これが写真集です」

9月、写真集を完成させました。タイトルは「水窪は語る」です。町の外に向けた広報と町に住む住民のための記録の2つの意味があります。

<住民>
「すごい…。あっ花火だ。若い頃を思い出したりして、また頑張ろうって気持ちが湧いてくるかもしれないね。水窪のことを知ってもらって、水窪に来てもらって、水窪がよくなって、もしよければ住んでほしいけど、ときどき遊びに来てもらったりして、水窪が元気になってくれればよいと思う」

<山いき隊水窪担当 山﨑洸一さん>
「『水窪を残していきたい』と思うならば、もっと知ってもらわないことには何も始まらない。声を出して、知ってもらって『手伝いたい』って来てくれるような外部人材が少しづつ増えていくことが地域が残っていく大事なポイントになると思います」

これまでにも「山いき隊」は、地元のサポートのほかに、キャンプ場の運営や特産品を使った新商品の開発など、地域の魅力を発信しようと新しい町おこしを行ってきました。

一方、取材を通じて、いまそこに住んでいる人が生活維持のために本当に必要なことをキャッチして、本音に寄り添う重要性も感じました。

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