八田技師の縁、販路拡大へ JA県中央会、台南で協定

交流協定を結んだJA県中央会の西沢会長(右から4人目)と台南市農会の呉総幹事(同5人目)=台南市内(藤澤瑛子撮影)

  ●西沢会長が署名

 【台南市=藤澤瑛子】JA石川県中央会は11日、台湾・台南市の農業組合「台南市農会」と交流協定を締結した。台南に烏山頭(うさんとう)ダムを築いて農業発展をもたらした金沢出身の八田與一技師を縁に、米など農産品の販路拡大に相互協力するほか、栽培技術や品質管理の向上で連携する。現地を訪問中の西沢耕一JA県中央会長が協定書に署名し、「八田技師の功績を契機に、技術や人の交流を盛んにしていきたい」と語った。

 台南市は日本の行政区分で都道府県に相当し、人口は約180万人。台南市農会は32の地域農会を傘下に持つ、JA県中央会と同等の組織となる。同農会によると、組合員に当たる会員は10万人以上おり、主要産品は米、マンゴー、文旦(ぶんたん)、パイナップルなど。年間生産額は約55億台湾ドル(255億円)。

 JAが海外の農業団体と協定を結ぶのは珍しく、県中央会にとっては初の試み。台南市農会にとっても海外の組織とは初めての連携となる。調印式は台南市内にある同農会の施設で行われ、西沢会長と同農会のトップに当たる呉嘉仁総幹事が文書を取り交わした。

 西沢会長は八田技師の功績に触れた上で、県が開発した高級ブドウ品種「ルビーロマン」やJA志賀のころ柿が既に台湾で高い評価を得ていると紹介。県産米のオリジナル品種「ひゃくまん穀(ごく)」の輸出拡大に強い意欲を示した。

  ●2024年、台南からも訪問

 呉総幹事も八田技師の名前を挙げ「市民は皆八田さんの素晴らしさを知っており、石川の農産物を台南で売る上でもアピールになる」と説明。台南産の果物や加工品を石川の消費者に知ってもらいたいと話し、栽培に関する技術指導にも期待を寄せた。来年、県を訪問する意向も示した。

 協定は台湾出身の県人らでつくる県台湾交流促進協会の協力を得て、北國新聞社が橋渡しした。JA側からは西利章県中央会専務理事、末政満全農いしかわ県本部長が出席し、竹沢淳一県農林水産部長と砂塚隆広北國新聞社社長が立会人を務めた。農会側は台南市農業局長らが出席した。商談会も開かれ、「ひゃくまん穀」の新米を使ってその場で握ったおにぎりなどが振る舞われた。

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