業務にChatGPT試験導入した結果…職員が挙げたメリットは 越前市が検証結果まとめ

越前市が試験導入したチャットGPTの活用検証結果が報告された市DX推進本部会議=10月11日、福井県の越前市役所

 福井県越前市は、今年5月に県内自治体で初めて業務に試験導入した対話型人工知能(AI)のチャットGPTの活用検証結果をまとめた。庁内業務での活用では、職員1人当たり年間60時間の削減効果があると試算。業務の効率化や高度化につながるとし、早ければ来年度の本格導入を目指す。一方、住民向けサービスへの活用は、回答の正確性に問題があるとして現時点での導入を見送る方針。

 5~10月に検証した活用事例は計3457件で、職員522人のアンケートなどから結果をまとめた。11日に市役所で開かれた市DX推進本部会議で報告された。

 庁内の職員利用では、市が定める各種計画や例規などの情報に基づいて質問に回答するシステムを、市専用のクラウド上で運用。文書作成の補助、企画のアイデア出しなどに試験活用した。

 業務時間の削減効果は、アンケート回答の平均値から年間60時間分と算出。活用例は▽市総合計画など長い文章が要約されてポイントの理解が早くなる▽あいさつ文をAIが作成した標準的な内容に追記して仕上げる-など。上司ら詳しい職員に尋ねずとも「いつでも何回でも気兼ねなく質問できる」との利点も挙げられた。

 業務の質に関しては、職員の77%が「向上する」と回答。高齢者福祉など複雑な制度を住民向けに分かりやすく要約してくれるなどの事例があった。

⇒越前市が「ChatGPT」導入した業務の範囲は

 今回のシステムは、回答の基になる情報を読み込ませる労力が大きかったとし、別仕様の製品による本格導入を検討する。AIへの効果的な指示文などの職員研修にも取り組む。

 行政手続きや暮らし全般に関する質問への回答を想定した住民向けサービスは、庁内で検証した結果、正確な回答の割合が58%にとどまった。市デジタル政策課は、市民が安心して利用できる水準ではないため「今後の技術革新を注視していく」としている。

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