「匿名宝飾店」が話題となった4℃、ジュエリーより好調な事業とは?

ブランド名を明かさず「匿名宝飾店」と大きく描かれた店舗が、原宿に2023年9月8日(金)から24日(日)の期間限定で出店していました。期間中の累計来場者数は5,500人と大盛況で、整理券を配るほどのにぎわい。期間中の20日(水)に覆面ブランドが「4℃」であると明かされました。

「4℃」といえば、『19歳の誕生日にプレゼントされると幸せになれる』という都市伝説が有名です。わたしが19歳のときにもすでに囁かれていましたので、かれこれ○十年以上、語り継がれており、これはある意味かなりの知名力です。ただ一方で、それを揶揄するような言葉もSNSなどで散見されることもあり、憧れのブランドとは言えなくなっているかもしれません。

そんな状況を打破するための施策が今回の「匿名宝飾店」でした。来店者が店を出る際に初めてブランド名を明かした上で、アンケート調査を行ったところ、83%が「4℃のイメージが変わった」、78%が「正体は意外だった」と答えたそうです。


上期予想を上方修正

さて、その4℃を運営する4℃ホールディングス(8008)の第2四半期決算が、10月6日(金)に発表されました。

画像:4℃ホールディングス「2024年2月期 第2四半期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

2024年2月期第2四半期の①売上高は19,110(百万円)、②前年比+3.2%、③営業利益1,069(百万円)、④前年比+65.7%と大幅増益となっています。じつは、発表に先駆けて9月25日(月)に上期予想の修正を行っています。

画像:4℃ホールディングス「業績予想の修正に関するお知らせ」より引用

当初の営業利益の予想値である①800(百万円)から②1,070(百万円)と、③33.8%も増額しています。通期予想は据え置いていますが、すでに上期の進捗率は50.9%を達成しています。ジュエリー業界は、年末のホリデーシーズンが繁忙期ですので、通期予想の上方修正の確率はかなり高いのではないでしょうか?

ジュエリーより好調な事業は?

同社の決算説明資料によると、ジュエリー市場の売上高はコロナ禍水準を上回り、2008年以来14年ぶりに1兆円を回復しています。「3年間に及ぶ自粛生活から解き離れて、人々が街に出るようになり、商業施設のテナントの客数が増加、自ずと売上も増加」とあります。たしかに、外出しないとジュエリーをつける機会もなかったですが、出かけるようになると新しいジュエリーが欲しくなります。

画像:4℃ホールディングス「第74期(2024年2月期)第2四半期 決算説明資料」より引用

こういったジュエリー市場の回復が追い風となって、同社の業績を押し上げているかと思いきや、ジュエリー事業は、前期比マイナスです。婚姻数の減少による、ブライダル店舗の苦戦が足を引っ張っているようです。

画像:4℃ホールディングス「第74期(2024年2月期)第2四半期 決算説明資料」より引用

一方、堅調なのはアパレル事業で、とくにイオンなどに多く出店している「パレット」が業績を牽引しています。現在は、関西地区をメインにドミナント出店戦略を取っていますが、関東圏へも出店を広げており、今期101店舗から2027年度には135店舗まで拡大予定です。

ジュエリーは女性が自分で買う時代?

4℃のジュエリー事業が伸び悩んでいる理由のひとつは、ジュエリーを女性が自分で買うパターンが増えてきているからかもしれません。『4℃をプレゼントされたら幸せになれる』という都市伝説からも分かるように、同社の商品は、男性が女性にプレゼントするイメージが強いです。事実、2022年2月期までは、顧客別の売上比率では男性のほうが高いため、時代の流れに乗り遅れているのかもしれません。

今後の課題は、女性が自分で買うジュエリーとしてのブランド地位の確率があります。そのための施策として覆面店舗は成功だったように思います。

株価はかなり底値圏

前期から業績が回復基調にあるため、株価も底値圏から反発しています。

画像:TradingViewより

ただし、2019年のコロナ前にも届いておらず、上値余地がまだまだあります。まずは、完全コロナフリーのホリデーシーズンでがっちり売上を取れるかどうか、さらに今後、女性自身が自分で買いたいジュエリーブランドにイメージ転換できるかどうかが焦点になりそうです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

© 株式会社マネーフォワード