F1トラックリミット問題の解決策は「コース自体を改善すること」とFIA会長。来年に向け早急に対処すべきと語る

 FIA会長のモハメド・ビン・スライエムは、トラックリミットの問題を解決するのはFIAではなくサーキット側であり、解決がなされなければそのサーキットはレースを失う可能性があると述べている。

 先週末のF1第18戦カタールGPでは、トラックリミット違反について多数のペナルティがドライバーたちに科せられ、今年の夏にオーストリアでF1が経験したのと同様の状況となった。しばしば混乱が見られるこのような状況は、F1のイメージを飾り立てることはなく、ビン・スライエムは変化を望んでいる。

 しかしながらビン・スライエムは、問題を解決したり緩和するために必要な修正を行う責任はサーキット側にあり、FIAによる取締改善にはないと考えている。

「そのとおりだ。オーストリアでも同じ問題が起きて、1200件の違反件数があった」と、トラックリミット違反とその解決方法について質問されたビン・スライエムは語った。

「そしてスチュワードがそれを発見したのでよかったと言わなければならない。だがそれが解決策なのだろうか? そうではない」

「解決策はコース自体を改善することだ。一部では抵抗があることはわかっているが、実のところ改善がなされなければレースは行われない。それほど単純なことだ。我々にはこの状況に耐える余裕はない」

2023年F1第18戦カタールGP ロサイル・インターナショナル・サーキット

 先週末のトラックリミットに関する論争は、ピレリがタイヤのサイドウォールが剥離する問題を発見したことで、タイヤに関する安全上の懸念からさらに悪化した。そのためFIAは安全上の理由から、日曜日のレースでタイヤの使用を最大18周までにすると義務付けることになった。

 しかしビン・スライエムは、違反を阻止する適切な縁石を設計する責任は、F1のコース側にあるとふたたび主張した。

「解決策に取り組まなければならない。解決策のひとつは、はみ出た時に滑りやすくすることだ。ドライバーたち以外にドライバーを止められる者はいない」

「(縁石の)高さについても考えることができるだろう。それはマシンにダメージを与えるか? といったことだ。もしくはグラベルを設ける可能性もあるかもしれない。だがグラベルについては細心の注意が必要だ。グラベルの深さはどれくらいにするのか? なぜなら誰にも立ち往生してほしくないからだ。砂利の大きさは? 我々はマシンを損傷したくない。これはバランスの問題だ」

「しかし今は、『我々が対応するのか?』という問題ではないと考えている。我々はやらなければならないのだ。そして主にドライバーたちからの意見とフィードバックに耳を傾けなければならない」

「来年に向けて実施しなければならないので、急いで対処しなければならない。(この状況を続ける)余裕はない。常に問題が起きている場所ではなおさらだ」

 F1では、トラックリミット検出の複雑さをテクノロジーで解決できるのではないかという議論がしばしば行われてきた。ビン・スライエムはこれに同意しているが、FIAには適切な技術に投資するための適切なリソースがないと主張している。

「テクノロジーが活用されるべきだ。テクノロジーは多くの分野で活用されているが、FIAはスポーツに再投資をするためにさらなるリソースを必要としている」

「私はここに隠れているわけではない。我々にはもっと多くのリソースが必要だ。これは200億ドル(約2兆9748億円)規模のプロジェクトであり、わずかな資本で実施することはできない」

2023年F1第18戦カタールGP セルジオ・ペレス(レッドブル)

 おそらく見て見ぬふりをされていた重要な問題に対処しているビン・スライエムは、FIAがF1の“合意”を必要としていることを示した。このことは、商業権保有者のリバティ・メディアによる高額な金銭的貢献を示唆している。

「我々の合意はよいものでなければならない。ひとつ覚えておかなければならないことは、我々はチャンピオンシップを所有しているということだ。私は家主を代表しており、それを貸し出している」

「我々の使命はリバティとは異なるが、我々は同じ状況に置かれている。我々はこの大きな責任をわずかな資本で負うべきではない。我々には透明性がある」

「我々はかかるコストを示した。人々は各F1チームの価値について自慢しているが、FIAは自由であり、最善の方法で運営するためのリソースを持っているはずだ」

「より優れたことをすれば、チームをよくすることができ、スポーツもよくすることができる」

2023年F1第18戦カタールGP FIAのモハメド・ビン・スライエム会長

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