故 岡正治氏「性暴力」問題 館名や展示内容を見直し 「被害者に寄り添い再出発」 長崎のNPO

記者会見で説明する崎山理事長(左)ら=長崎市役所

 長崎市西坂町のNPO法人「岡まさはる記念長崎平和資料館」は11日、市内で会見し、館名に冠する平和運動家の故岡正治氏(1994年死去)から約30年前に「性暴力を受けた」と証言する女性に謝罪し、館名や展示内容の見直しを進めると正式発表した。対応のため10日から一時休館中。崎山昇理事長は「被害者の思いに寄り添った形で対応し、資料館として再出発したい」と述べた。
 岡氏は朝鮮人被爆者の実態解明などに取り組んだ牧師で、長崎市議も務めた。日本の戦争加害責任を伝える必要性を生前指摘していた岡氏の遺志を継ぎ、市民有志が95年10月、同館を開設。岡氏の活動に関する展示コーナーもある。
 女性は2020年にインターネットの投稿サイトで被害を告発し、同年にはNPOの理事数人が投稿を把握。女性が記者だった1994年当時、取材対象だった岡氏の自宅で被害に遭ったとの記載を確認したが、NPOとして事実確認などの対応を取らなかったという。しかし今年4月にNPO内部から対応を求める声が上がったため、関係者を通じて女性に聞き取りを行い、文書で先月謝罪した。
 会見でNPO側は「女性がつらい出来事を話していただいたことを踏まえ(性暴力を)事実として受け止める」と説明。ただNPOは岡氏の死去後に設立しており「性暴力については(直接の)当事者ではなく謝罪することができない」とした上で、「(2020年以降に)問題を知りながら放置し、被害者の心を傷つけ続けたことは申し訳ない」と陳謝した。背景には「権威ある男性を疑わず被害者の証言を重大に捉えない、内面化された性差別意識やジェンダーバイアスがあった」とした。
 館名の見直しはNPOの定款変更を伴うため、11月に開く総会で最終決定し、今後の具体的な対応を含め改めて公表する。

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