藤井、史上初の全八冠に「将棋熱も盛り上がる」 県内関係者やファン、底力に驚き

将棋を指しながらスマートフォンで王座戦の戦況を見つめる桐山さん(右)と生徒の二上さん=11日午後8時30分、宇都宮市東宿郷6丁目

 一進一退の攻防の末、藤井聡太(ふじいそうた)七冠(21)が永瀬拓矢(ながせたくや)王座(31)を破り、史上初の全八冠制覇を達成した11日夜、県内の将棋関係者やファンの間にも驚きと祝福が広がった。「県内の将棋熱も盛り上がる」。前人未到の偉業に、さらなる“藤井フィーバー”と裾野拡大を期待する声が上がった。

 同日夜、宇都宮市東宿郷6丁目の「宇都宮駅東桐山将棋教室」。講師の桐山隆(きりやまたかし)さん(53)と生徒の宇都宮短期大付属高2年の二上武琉(ふたかみたける)さん(17)は、スマートフォンで王座戦の戦況を確認しながら、将棋を指した。数手ごとに形勢が入れ替わる緊迫の終盤戦。午後8時59分、勝敗が決すると2人は大きく息をついた。

 終局後、桐山さんは両者の指し手や戦略を解説。「追い込まれてから藤井さんが底力を見せた。優勢だった永瀬さんも重圧を感じたのでは」と分析した。

 永瀬前王座のファンという二上さんは複雑な表情。「藤井八冠は自然体で将棋を楽しむ姿勢が勉強になる。年齢が近いので、考え方などを参考にしたい」と話した。

 藤井八冠の大躍進は、本県将棋界の裾野拡大にも大きく影響する。日本将棋連盟県中支部の相羽徳三郎(あいばとくさぶろう)支部長(77)によると、同支部の小学生会員は3~4年前まではほとんどいなかったが、現在は11人に増加。小中高校生の会員は計22人で、全体の約半数を占めるほどになった。

 相羽支部長は「本県だけでなく、全国でも同様の現象が起きていると思う」と指摘。「八冠誕生で県内の将棋熱も高まる。好機を逃さず、より親しんでもらえるよう尽力していきたい」と語った。

 今年3月、大田原市内で開かれた王将戦初防衛を祝う祝勝会で、運営スタッフを務めた同市文化振興課係長の小堀聡(こぼりさとし)さん(48)は「藤井八冠は寡黙な中にも、将棋に正直に向かい合っている印象を会話の一言一言から受けた」と振り返る。

 永瀬前王座も以前、王将戦や将棋の行事で同市内を訪れていた。小堀さんは「2人とも今後さらなる活躍を期待される棋士。将棋のまちづくりを掲げる大田原市から応援を続けたい」とエールを送った。

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