社説:IGF京都会議 AI規制の道探る場に

 インターネットを巡るさまざまな課題や急速に普及する人工知能(AI)の取り扱いを議論する国連の会議「インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)」が京都市で開催中だ。きょう最終日を迎える。

 IGFは2006年から毎年開催され、各国政府やIT企業だけでなく、研究機関やNGOなども含め約8千人が参加している。

 特定の国や企業の利害を超え、透明で開かれたインターネット空間をどう作り上げていくか。国連の場で議論することに意義がある。実効性のあるルール作りへの道を見いだせるか。注視されよう。

 最大の焦点は、生成AIと偽情報対策だ。

 生成AIを誰がどのように統治するか。今年5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は国際的なルールを形成する枠組み「広島AIプロセス」を進めることで合意している。ここに多くの国を巻き込めるかが、実効性の鍵を握るとされる。

 IGFの講演では、G7議長国の岸田文雄首相が今秋にも開くG7首脳会議で生成AI開発者向けの指針や規範づくりを進めると表明した。

 一方、具体的な対策については考え方が立場によって異なることが早速、浮かび上がっている。

 欧州連合(EU)が、AIの学習データや誤作動情報の開示を柱とした、透明性を高める法規制に積極的なのに対し、AI関連企業は企業主導での公開にとどめるべきと主張している。

 政府間の議論だけでは実効性のあるルール作りは難しいのが現実だろう。

 日本政府は主要国やIT企業だけでなく、途上国などからも幅広く意見を集める場としてIGFを生かしたい。 

 インターネットの自由度も重要テーマとなっている。

 中国やロシアなどではすでに通信に厳しい規制をかけており、中東などにも広がりつつある。

 最新技術が人々を分断する道具になってはならない。分科会では、ネット空間でも「自由と人権」の原則が適用されるべきとの確認がなされた。

 フィリピンのジャーナリストで21年にノーベル平和賞を受賞したマリア・レッサさんは「AIの偽情報は怒りや憎しみをあおっている」とIT企業幹部らに訴えた。

 フォーラムの関係者はこうした現実を直視し、継続的に議論を深めてほしい。

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