国際大会誘致の布石に 都市ブランド向上の一助 LRT停留場隣接地に一大拠点構想も 輪都駆ける㊦「活路」

出場選手らとフォトセッションに臨む佐藤市長(右から4人目)。ジャパンカップは市の地域資源としても期待されている=9月、ライトキューブ宇都宮

 「自転車の祭典」がさらに飛躍する転機があった。

 2014年。宇都宮市はジャパンカップの所管部署を、市教育委員会から市長部局の経済部に移した。

 「競技に力を入れるだけでなく、まちづくりに生かすのが使命だった」と市関係者。大会の仕掛けは大がかりになり、地域振興の視点でもスポーツの存在感が増していった。

 海外有力チームとの交渉に、自転車ファンの受け入れ。公道で展開されるレース。さらにロードレースにクリテリウムという、内容の異なる種目を同じ地域で連日開催する負担感…。

 「地元、関係団体、警察などの一致協力があってこそ継続できた」。市OBで前経済部長の笹野賢治(ささのけんじ)さんは感謝する。

 ジャパンカップの実績は、3人制バスケットボール「3x3(スリーエックススリー)」の国際大会受け入れの布石となった。

 国際バスケットボール連盟(FIBA)の主催で、世界の強豪が集まる大会。市関係者は「ジャパンカップを通じ、外国人と交渉できる自信がついた。国際大会のノウハウも得ていた」と、受諾した当時を振り返る。

 16年7月、ワールドツアーマスターズを市中心部で初開催。市によると、今春の国際大会には7万人が来場し、経済効果は約6億円に上った。大会は28年までの連続開催が決まっている。

 次世代型路面電車(LRT)の平石停留場。市は26年、隣接地に3x3、自転車BMX、スケートボードの施設を整備する。アーバンスポーツの一大拠点とする構想で、国際大会も視野に入れる。

 行政へのスポーツ活用が加速する中、市は来年度、スポーツと文化を担当する新しい部署を創設する。

 「自転車も3x3も知名度が高く、世界に発信できる。国際競技をシビックプライド育成につなげたい」。佐藤栄一(さとうえいいち)市長はスポーツ振興の意義をこう説く。

 人口増、企業誘致、都市ブランド向上という果実を求め、市はスポーツのまちづくりに新たな活路を見いだす。

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