Case.15 飛行日誌アプリで簡単管理!ドローンを飛ばすまでと飛ばしたあとの手続きまとめ2023年版[田口 厚のドローンプロジェクト日誌]

さらなるドローンの活用を促進するため、2022年12月にドローンの飛行ルールが変更になりました。飛行日誌の作成や記録などのルールが追加になったため、面倒に思ってドローンを飛ばす機会が減ってしまった方や、ドローンを始めたいけれど二の足を踏んでいる方も多いかと思います。
そこで今回は、ドローンを飛ばすまでと飛ばしたあとの手続きの流れや、効率的に行うコツをご紹介いたします。

ドローンを飛ばすまでと飛ばしたあとの流れ

ドローンを購入してから飛ばすまでの手続き的な流れは下記のとおりです。機体の登録から始まり、飛行ルールや空域の確認、飛行日誌の作成と記録などがあります。

  • 機体の登録
  • 飛行ルールの確認と必要に応じて国土交通省への飛行許可承認申請
  • 小型無人機等飛行禁止法の該当施設の確認
  • 緊急用無空域の指定有無の確認
  • 飛行計画の通報と確認
  • 飛行日誌の作成と記録
  • 事故等を起こしたら

0.機体の登録

ドローンを購入したら、まずは機体を国土交通省に登録し交付された「JU」から始まる12桁の登録記号を機体に表示、リモートID機能により情報を発信する設定をします。機体の登録については別途記事を作成していますのでコチラをご覧ください。ほかにも、機体登録ポータルサイトも参考になります。

1.飛行ルールの確認と必要に応じて国土交通省への飛行許可承認申請

ドローンを飛行させる際のルールには、航空法で定められた4つの飛行禁止空域と6つの飛行方法があり、それら規制の対象となる飛行のことを「特定飛行」といいます。

飛行禁止空域 出典:国土交通省
飛行の方法 出典:国土交通省

これら4つの飛行空域と6つの飛行方法に該当する飛行=特定飛行を行う際には、国土交通省に飛行許可承認の申請を行い、飛行許可承認を得てから飛行させる必要があります。申請には、ドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)を利用します。

また、飛行禁止空域に含まれる「人口集中地区」や「空港等の周辺」はコチラの地図より確認できますので、ご活用ください。

「空港等の周辺」の飛行禁止空域内(上記地図黄緑色のエリア)では、制限表面(空港・空域ごとに高度が設定された飛行禁止空域の高度)で設定された高度未満の場合は飛行禁止に該当しません(ただし、上記地図内の紫色のエリアは制限表面下も飛行禁止)。空港の周辺等でドローンを飛行する際には、該当の空港管理事務所に飛行場所の制限高度を確認するか、大きな空港の場合は「高さ制限回答システム」というWebサービスがありますのでそちらを利用して制限高度を確認しましょう。

※空港名+高さ制限回答システム で検索すると出てきます

2.小型無人機等飛行禁止法の該当施設の確認

航空法以外にも、重要施設の危険を未然に防止するため、指定した重要施設周辺のおおむね300m以内を飛行禁止とする「小型無人機等飛行禁止法」という法律があり、国会や皇居、空港や防衛施設、原子力発電施設などの周辺を飛行禁止としています。該当施設はコチラのサイトにまとまっていますので、飛行予定場所周辺に該当施設がないか、確認しましょう。

3.緊急用無空域の指定有無の確認

災害などが発生した地域では、ヘリコプター等による捜索救難活動などの緊急用務を安全に行うため「緊急用務空域」が指定され一部空域のドローンの飛行が禁止となる場合があります。「緊急用務空域」の指定の有無はコチラより確認できます。

緊急用務空域の指定があると緑色のバナーが赤色のバナー表示となり、指定の詳細情報がPDFファイルで提供される出典:国土交通省

4.飛行計画の通報と確認

飛行予定空域に問題がないことが確認できたら、DIPS2.0の「飛行計画の通報・確認」を利用して飛行計画を通報します。"通報"と言ってもMap上に飛行範囲を設定し、操縦者や機体、飛行高度などの設定を登録するものです。

また、飛行計画を通報すると同時に、自分が飛行を予定している空域・時間にほかの操縦者によるドローン飛行が予定されていないか確認をしましょう。飛行計画登録時に飛行空域が重なる他の操縦者がいる場合は連絡先(e-mailアドレス)が提示される仕組みになっていますので、飛行に支障をきたす可能性がある場合は連絡を取って調整を行ってください。

飛行計画の参照画面。日時を指定するとその表示された地図範囲内で登録された飛行計画が表示される

※飛行計画の通報が義務なのは特定飛行を実施する場合になりますが、安全な飛行のため特定飛行以外の飛行時にも飛行計画の通報・確認をするようにしましょう。

5.飛行日誌の作成と記録:JULC飛行日誌アプリの活用

ドローンを飛行させる際には飛行日誌を作成・記録します。飛行、点検および整備状況について継続的に記録することにより、ドローンの飛行にトラブルが起きた場合の原因特定や要因分析などに活用できます。

飛行日誌は、飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3つの内容で構成されており、機体ごとに作成、保管をしなくてはなりません。ここを効率化することが、ドローンを楽しむためのコツと言っても過言ではないでしょう。

飛行日誌のフォーマットは国土交通省から提供されていますが、PDFを印刷してボールペンなどで記入するのは効率的ではありません。そこで、いろいろなところからWebサービスなども提供されていますので、そちらを利用するのが便利です。今回はその中から、iPhoneなどのiOSユーザー向けの無料アプリ「JULC飛行日誌アプリ」(無料の会員登録必要)を例にご紹介します。

JULC飛行日誌アプリは、iPhoneにインストールしておくだけで記録に手間のかかる飛行記録の記載や携帯が必要な飛行日誌履歴データの持ち運びを効率化できます。

《操作方法》

とてもシンプルなインターフェイスで、飛行前に片手で確実に操作できる大きなボタンが特徴的な画面となっています。

(1)日常点検記録

ホーム画面あらかじめ登録した操縦者と機体を選択して「点検開始」をタップすれば飛行前点検画面が表示される
飛行前点検点検項目をタップすれば「異常なし」となる。備考欄は鉛筆マークをタップすることで記入することができる
準備完了点検項目を全てタップすれば点検した日時と場所が自動的に記録される。飛行概要を入力後「準備完了」をタップすれば飛行記録の記録画面に遷移する

(2)飛行記録⇒飛行後点検

記録開始画面離陸の際に「記録開始」をタップするとiPhone等の位置情報と時計から離陸場所と時間が記録される
記録終了画面着陸して機体の電源をOFFにしたら「記録終了」をタップすることで着陸場所と時間を記録できる。ボタンが大きいので押し間違えすることがなく使い勝手がよい
飛行後点検飛行機録画終了すると自動的に飛行後点検画面に遷移。飛行前点検と同じく点検した項目をタップすれば「異常なし」となる

(3)点検整備記録と各記録履歴の表示

点検整備記録点検整備を行った際に記録する点検整備記録もシンプルな画面で記録できる。飛行時間20時間毎に入力を促す通知も出るので便利だ
履歴確認画面点検結果の履歴は国土交通省提供のフォーマットで確認することができる

JULC飛行日誌アプリは2023年10月現在ではiOS版のみの提供となっていますが、Android版も待ち遠しいところです。

※飛行日誌の記載と携帯が義務なのは特定飛行を実施する場合になりますが、連続性のある記録のため、特定飛行以外の飛行時にも飛行日誌の記録と携帯をするようにしましょう。

6.事故等を起こしたら

安全に飛行することは大前提ですが、どれだけ安全に留意していても墜落等のアクシデントが起きることはゼロにはできません。負傷者が発生した場合、ただちにドローンの飛行を中止し、事故等の状況に応じて危険や被害の拡大を防止するために必要な措置(負傷者の救護、火災の消火等)を講じてください。

また、「事故」や「重大インシデント」が発生した際には、事後に国土交通省へ報告をする義務があります。事故・重大インシデントの該当する事態は下記になります。

《事故》出典:国土交通省「無人航空機レベル4ポータルサイト」
《重大インシデント》出典:国土交通省「無人航空機レベル4ポータルサイト」

事故または重大インシデントに該当しそうな事態が発生した場合には、コチラに記載の内容を理解の上、DIPS2.0の事故等の報告より国土交通省に報告を行ってください。

また、この事故・重大インシデントの報告と内容の公表は特定の人物や会社を晒すことが目的ではなく、事故や重大インシデントの状況や原因を共有することによりドローン操縦者がリスク管理の参考にできるようにしたものです(人や会社を特定できるような情報は公開されません)。定期的にほかの方の事故の発生事例を確認し、自身の安全運航にお役立てください。

無人航空機に係る事故等報告一覧(国土交通省)

ブラッシュアップされた安全に飛行するためのルール

2015年12月の改正航空法施行以降、ユーザーも国も手探りでドローンの安全かつ効果的な活用について学び、実践してきました。そのひとつの成果が、今回のルール改定となっています。多少手間がかかるところもあるかもしれませんが、ドローンの安全な飛行と活用には必要なものです。ユーザー側としては効率化を図りながら楽しくドローンを活用していきましょう。

© 株式会社プロニュース