根回し無し!波乱も!安芸高田市”ガチンコ議会”の舞台裏

議会のライブ配信を7000人以上が視聴し、全国の地方議会で最も注目を集めていると言っても過言ではない広島県の北部に位置する安芸高田市議会。

議会で注目を集めているのは、石丸伸二市長(42)がベテラン議員の「論理的でない質問」を指摘する場面や、若手議員に対して厳しい口調で問い詰めるシーンだ。

傍聴者からも「つまらないのかと思ったが、結構面白かったという印象」や「今までの出来レースとは違う」といった感想が聞かれる。

安芸高田市議会に何が起こっているのか、その舞台裏に迫る。

■42歳石丸伸二市長「根回しは不要で害悪」

議会の「一般質問」とは市の施策や方針などについて、議員が直接質問できる場で議員の最も大切な仕事の一つだ。

広島ホームテレビの過去の取材では、その一般質問について自治体職員と議員が事前に質疑内容をすり合わせたり、質問自体を職員に考えさせる議員がいたという話が出ていた。

しかし、石丸体制の安芸高田市議会では事前の根回しがない「ガチンコ勝負」で、一般質問が行われている。

「他の議会では一般質問が政治的なパフォーマンスの場になっているのは一面としてというか、かなりの程度、そうなんだと思いますね。一般的に何をするかと言ったら議論なんです。それは建設的であり、生産的でないとダメなんです。やらせとか、根回しみたいのは不要というか、僕は害悪だと思っています」。

こう語る石丸市長が理想とするガチンコの議論とは、政治家が公の場で議論をしながら、

それぞれの立場や論理をもとにより良い政策を導き出すというもの。市長になって4年目のいま。市の答弁に変化が起きている。

例えば、「産婦人科の誘致のために助成金が必要では?」という質問には「少子高齢化・人口減少が進む安芸高田市で産婦人科を誘致するなど現実的ではない」。

「古墳の活用法の提案」に対しては「古墳にカネをかけても意味がない」など、質問に対して「できる」「できない」をはっきり答弁する方針になったという。

これについて、石丸市長は「今後状況を見て検討していきますみたいな答弁なんですよ。

長らく安芸高田市っていうのは、何も答えてないっていう答弁が当たり前だったんですね。

それは意味がないのでやめようと。やらないものはやらない、やるものはやる。良いなら良いし悪いなら悪いとはっきり言わないと議論にならないので。今徹底して直しているところではあります」。と、自身の考えを述べた。

■ガチンコの一般質問で「議員のスキルは間違いなく上がる」

当選1回の新人・田邊介三議員。自身の質問原稿には、「はい」と「いいえ」の2パターンが準備されている。これは市の答弁がどちらになっても、答えられるようにするためだ。

「勉強していないと議員は何も言えない。間違いなく議員のスキルは上がりますよ」と、石丸市政のやり方を評価している。

実際に田邊議員には過去の一般質問で、市とのやり取りの末、市長の「検討します」という言葉を引き出し、実際に予算化されたという経験がある。

「公の場で議論をするというのは必須ですね。でないと、市民の方は分からないので。ちゃんとした質問をして、それが必要ということが執行部で判断された場合には、ちゃんと予算化してくれるので、やりがいはあるかなと思います」。と、ガチンコ議論の必要性を訴えた。

田邊議員は、9月に行われた一般質問でも「いい答弁をもらえた」というやり取りがあった。

その質問とは簡単にまとめると、『猟期以外にも、駆除ができる捕獲班について猟銃免許を持っている人が優先登録される傾向に。そこで、罠猟専門の捕獲班を作ればより効率的に害獣駆除できるのでは?』という提案だ。

これに対して、市は「現状、捕獲班でなくても名義を借りて罠を仕掛けられるので、専門班は難しい」と回答。

しかし、田邊議員は「猟期以外の時はやはり捕獲班に来ていただかないといけない。銃が使えない地域にももちろん獣は出てくる。先輩方の技術学べるという点でも利点があると思います」。と、食い下がった。

そして石丸市長から「分業による体制づくりの構築を検討してみたい」という答弁を勝ち取った。

「予想外ではあったんですけども、いい答弁をいただけたので、そこに関しては良かった。部長の『検討する』と、市長の『検討する』は違うだろうなと思っているので、社交辞令的な検討するとは違うだろうな」。と、手ごたえを口にした。

■最大会派の議員からは「全部市長の演説。変わっていない」

9月の一般質問の傍聴者からは「初めて来たが、歯切れがいい」や「つまらないかとい思ったが、結構面白かった」などと好印象のようだった。

他の議員からも「質問通告の中に無かったことも、ほぼ答えてもらえるので、質問のし甲斐があります」(芦田宏治議員)や「石丸市長が検討すると言えば、何かするんだろうなという期待感がある」(熊高昌三議員)という声も聞かれた。

一方で、最大会派清志会の議員は「全然変わっちゃおらんよ。全部市長の演説じゃないか。変わってない」(山本優議員)と答えた。

今回密着したケースのように「論理的に」議論がかみ合った議員もいれば、そうでない議員も…。しかし、変わり始めている議会のガチンコ議論、ますます注目が高まりそうだ。

※内容は、10月3日放送当時

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